「オルカン」VS「S&P500」徹底比較!
新NISAで選ぶべきはどっち?
新NISAで投資を始めようと思ったときに、どの銘柄を選ぶべきか悩む人も多いでしょう。そんなときによく出てくるのが、全世界株式「オルカン」や米国株式「S&P500」です。どちらもさまざまなメディアで推奨されている銘柄ですが、どちらを選べばいいのか、違いは何かなどの疑問をお持ちの人もいるかもしれません。そこでこの記事では、両者の特徴や違い、どちらを選ぶべきかまでご紹介していきます。
・目次
新NISAの基本的な仕組み
NISAとは2014年1月から始まった、資産運用の際に得られる税制上の優遇制度です。通常投資を行って利益を得られた場合、20.315%の税金が発生します。しかしNISA口座で運用していた場合は非課税となるため、節税効果が高いです。
2024年1月にはさらに使いやすいように制度が改善され、新NISAと呼ばれています。新NISAには、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの枠があります。
●成長投資枠
株式や投資信託に、一括で投資する場合に使用する枠です。総額1,200万円まで、年間だと240万円まで投資できます。
●つみたて投資枠
毎月決まった金額を積み立てたい場合に使用する枠です。年間120万円まで利用できます。
NISA口座の非課税投資枠は、成長投資枠とつみたて投資枠を合わせて1,800万円までです。
NISAについてもっと詳しく知りたい場合は、 |
購入できるファンドは?
NISA口座で購入できる金融商品には、制限があります。特につみたて投資枠は、長期にわたって安定した投資運用をサポートするためのものなので、金融庁が定めた投資信託(ファンド)のみ購入が可能です。
成長投資枠では、投資信託(ファンド)だけでなく上場株式も購入できますが、すべての株式を購入できるわけではありません。
●成長投資枠で購入できる金融商品 上場株式、投資信託(ファンド)など
●つみたて投資枠で購入できる金融商品 金融庁が長期の積み立てに適していると判断した投資信託(ファンド) |
今回ご紹介する「オルカン」や「S&P500」は、どちらも投資信託(ファンド)の一種です。成長投資枠、つみたて投資枠のどちらでも購入できます。
つまりどちらのファンドも、金融庁が長期積み立てに適していると判断しているということになります。
全世界株式「オルカン」とは
全世界株式、もしくは「オールカントリー」「オルカン」という名称を聞いたことがある人は少なくないでしょう。ただ内容はよくわからないという人のために、詳しくご紹介していきます。
全世界株式インデックスファンドのこと
オールカントリー(通称オルカン)は、全世界株式インデックスファンドのひとつで、正式名称は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」といいます。
インデックスファンドとは、価格が株価指数(ベンチマーク)に連動するように設定された投資信託(ファンド)のことです。
株価指数には、上場株式の値動きに連動する日経平均株価やダウ平均株価などがあります。オルカンの株価指数は、「MSCI All Country World Index」(MSCI ACWI)という全世界株式指数です。
投資先は全世界
MSCI ACWIは先進国23カ国と新興国24カ国の大型株・中型株のうち、時価総額が高い銘柄で構成されており、世界の株式市場の時価総額約85%をカバーしています。
つまりオルカンを購入するということは、世界の株式市場全体に投資するということです。
※MSCIの情報を基にマネのび作成
上記からわかるように、米国株式の比率が6割以上を占めています。日本の株式は次いで2番目ですが、割合はさほど高くありません。
ただしオルカンの組入れ銘柄は定期的に見直されるため、比率は一定ではなく常に変動しています。
人気ファンドのひとつ
オルカンの投資対象は全世界なので、世界の経済が成長し続ければ利益を上げられるとして、とても人気があります。
世界経済にも短期的な下落は当然起こります。たとえば、リーマンショックや新型コロナウイルスが流行した頃などです。しかし長期的な視野でみれば世界経済は成長し続け、今後の成長も見込まれています。
また米国企業をはじめとしたグローバル企業に投資をしつつ、今後の成長に期待を持てる新興国市場にも同時に投資ができることも、人気の理由のひとつです。
米国株式「S&P500」とは
オルカンと並びよく耳にするのが、「S&P500」もしくは「米国株式」でしょう。こちらも詳細をご紹介していきます。
米国株式インデックスファンドのこと
そもそも「S&P500」とは、米国株式インデックスファンドが目標とする株価指数のことです。通称「S&P500」という名で呼ばれているのは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」というファンドを指します。
「S&P500」の正式名称は「Standard & Poor's 500 Stock Index」で、米国の経済状況を図る指標として、とても定評があります。
米国の主要企業500社に投資
S&P500は米国のニューヨーク証券取引所やナスダック(NASDAQ)に上場する銘柄のうち、時価総額が高い主要500社の時価をもとに算出されており、米国株式市場の時価総額約70~80%をカバーしています。
S&P500の組入上位10銘柄は以下の通りです。
1 |
MICROSOFT CORP(マイクロソフト) |
2 |
APPLE INC(アップル) |
3 |
NVIDIA CORP(エヌビディア) |
4 |
AMAZON.COM INC(アマゾン) |
5 |
META PLATFORMS INC-CLASS A(メタ クラスA) |
6 |
ALPHABET INC-CL A(アルファベット クラスA) |
7 |
BERKSHIRE HATHAWAY INC-CL B(バークシャー・ハサウェイ クラスB) |
8 |
ELI LILLY & CO(イーライ・リリー) |
9 |
ALPHABET INC-CL C(アルファベット クラスC) |
10 |
BROADCOM INC(ブロードコム) |
引用:三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」交付運用報告書(2024年4月)
運用実績は好調
米国市場は短期的に下落することはあるものの、ここ数十年右肩上がりの成長を続けています。S&P500は米国株式市場全体の動きを反映しているため、連動しているインデックスファンドの運用も順調です。
今後もこのまま米国経済が成長し続ける保証はありません。しかし過去の実績や米国が世界経済の中心であることから、今後も期待できると考えられます。
オルカンとS&P500の違いを項目別に比較!
オルカンとS&P500はともに人気があるので、どちらを選べばいいのか悩むかと思います。そこで両者の違いを項目別に比較してみました。
|
全世界株式 |
米国株式 |
特徴 |
世界経済に連動した値動きをする |
米国経済に連動した値動きをする |
主な投資先 |
全世界 ・先進国23カ国 ・新興国24カ国 ・世界の株式市場の時価総額約85%をカバー |
米国主要企業500社 ・米国の株式市場の時価総額約70~80%をカバー |
ベンチマーク |
MSCI ACWI |
S&P500 |
平均利回り(年率)※1 |
1年:26.80% 3年:19.85% 5年:18.24% |
1年:31.91% 3年:23.66% 5年:22.13% |
リスク分散性 |
高い |
低い |
手数料(信託報酬)※1 |
0.05775% |
0.0814% |
メリット |
・世界中に分散投資できる ・手数料が比較的安い ・世界経済の成長に応じて収益を得られる |
・米国の優良企業にまんべんなく投資できる ・高い成長率を期待できる ・値動きを予想しやすい |
デメリット |
・米国への依存が高め ・為替リスクがある |
・米国経済に左右される ・為替リスクがある |
※1 2025年1月末のデータ
引用:楽天証券
特徴
全世界株式(オルカン)は、その名の通り全世界に分散して投資するので、世界経済の影響を受けます。世界経済が成長していけば株価も上昇するので、堅実に利益を期待できるファンドといえるでしょう。
一方米国株式(S&P500)は、米国の主要企業に投資します。米国にはグローバルで高い成長率を誇っている企業が多く存在しており、さらなる成長を期待できます。
主な投資先
オルカンの投資先は全世界で、先進国だけでなく新興国も含まれます。世界の株式市場の時価総額約85%をカバーしていますが、約6割の投資先は米国です。ただし構成国や銘柄は一定ではなく、情勢に応じて見直しされています。
たとえば2022年にロシアによるウクライナ侵攻があった際には、各国がロシアに対し制裁をかけ投資が制限されたため、構成国から外されています。
S&P500の投資先はすべて米国企業の株式です。米国でも有数の企業に投資しており、米国の株式市場における時価総額約70~80%をカバーしています。こちらも組入銘柄は定期的に見直されています。
ベンチマーク
オルカンのベンチマークは、世界中で広く利用されているMSCI ACWI(MSCI All Country World Index)です。2,687の銘柄から構成されており、約4.9兆米ドルもの資産のベンチマークとして利用されています。
※2024年10月時点
S&P500はベンチマークであるとともに、商品名にもなっています。米国のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが算出する指標で、上位銘柄は上記でお伝えした通りです。ニューヨーク証券取引所やナスダック市場の主な銘柄が網羅されており、ITやヘルスケア、金融、エネルギーなど幅広い業種を取り扱っています。
S&P500の銘柄に採用されるには、主に以下の条件をクリアしなければならないと言われています。
・米国企業であること
・時価総額が約82億ドル以上であること(※1)
・四半期連続で黒字であること
・流動性が高いこと
・ニューヨーク証券取引所やナスダックなどに上場していること
・浮動株(※2)が株式総数の50%以上であること
※1時価総額の基準が「53億ドル以上」や「130億ドル以上」という情報もあります。
※2浮動株とは、市場で流通しており日々売買できる株式のことです。
平均利回り
収益はどちらも好調ですが、比べるとS&P500の方が高い水準です。これは、近年の米国株式が順調であることを受けた結果でしょう。
世界経済も成長を続けているため、オルカンの利回りも順調です。しかし投資対象は新興国を含む全世界なので、株高の米国市場のみを対象としたS&P500と比べると、やや劣る結果になりました。
ただし好調な米国経済がどこまで続くかはわかりません。米国の利上げやインフレの影響などの懸念事項もあるため、将来的には逆転する可能性もあります。
リスク分散性
リスクの分散はオルカンに軍配が上がります。S&P500は米国株式に集中しているため、米国経済が衰退するとダメージが大きいです。
オルカンは全世界に投資しているので、リスクを分散していると言えます。米国株式の割合が高いものの、組入銘柄は常に見直しているので、仮に米国市場が下落してもほかの株式でカバーできる可能性が高いです。
手数料
オルカンもS&P500も購入時に手数料はかからないので、信託報酬のみ発生します。これは信託財産を管理、運用するのに必要な経費です。
インデックスファンドは、積極的に利益を追求していくアクティブファンドよりも信託報酬は低めに設定されています。中でも、eMAXIS Slimシリーズは、業界最低水準の運用コストを目指しているため、特に信託報酬が低めです。
インデックスファンドの信託報酬は一般的に0.1%程度~といわれていることからも、オルカン・S&P500ともに低水準の信託報酬であることがわかります。
【アクティブファンドとは】 ベンチマークを上回る利益を目指すファンドです。ファンドマネージャーによる積極的な売買や分析などが必要になるため、運用コストが高めになります。 |
メリット
オルカンのメリットは全世界に分散投資でき、世界全体の経済成長の恩恵を受けられることです。先進国だけでなく新興国にも投資しているので、新興国が経済成長した際の利益も受けられます。随時銘柄の見直しを行っているので、世界経済の状況に応じて柔軟に対応可能です。そして、信託報酬が低いという特徴もあります。
S&P500の最大のメリットは、経済大国アメリカの恩恵を受けられることです。米国に数多くあるグローバル企業にまんべんなく投資できるので、高い利回りを期待できます。日本にいても米国の優良企業の情報は手に入りやすいので、値動きの予想もしやすいです。
デメリット
オルカン、S&P500の共通のデメリットとして、為替リスクがあげられます。どちらも外貨で投資するため、為替リスクは避けられません。
また投資の基本は分散投資であることから、米国に一極集中して投資するS&P500はリスクが高いとも考えられます。米国経済がこの先もずっと好調であるとは限りません。
オルカンに関しても、全世界に投資しているとは言え米国の比重が非常に高いことから、米国経済の影響を強く受けます。
オルカンとS&P500、どっちに投資すべきか
全世界株式と米国株式はともに人気が高く、利回りも期待できる商品のため、どちらを選ぶべきか悩むところです。正解があるわけではありませんが、それぞれにおすすめのタイプをご紹介するので、参考にしてみてください。
全世界株式「オルカン」がおすすめの人
・できるだけ分散投資をしたい人
・新興国の株式も取り入れたい人
・リスクをできるだけ避けたい人
オルカンがおすすめなのは、「米国一極集中」に不安を覚える人です。過去数十年の米国経済は確かに好調ですが、この先も続く保証はありません。今後はアジア圏の経済成長も予想され、米国がトップではなくなることもあるでしょう。
そのためできるだけリスクを避けたい人は、分散投資ができカントリーリスクを比較的抑えられるオルカンがおすすめです。
米国株式「S&P500」がおすすめの人
・より高い利回りを期待する人
・米国企業に親しみがある、応援をしたい人
・今後も米国経済は好調だと思う人
一方、やはり米国経済は強いと思う人はS&P500がおすすめです。実際、S&P500のパフォーマンスはオルカンよりも優れています。
また米国企業はグローバル企業が多いため、新興国の経済成長をある程度取り込めることもまた事実です。日本で親しみがある企業も多く、応援したいと考えている人にも向いています。
両方買うべき?リスクを分散する方法
オルカン・S&P500ともに優良な商品なら、両方買えばいいのでは?と思う人もいるでしょう。
どちらも購入するのが悪いわけではありませんが、リスクの分散という点から考えるとあまりおすすめできません。
なぜなら、オルカンも米国株を60%以上組み入れていることから、値動きがS&P500と似ているからです。新興国や欧州市場の影響も受けるため、完全に同じではありませんが、似た動きにはなります。
これではさほどリスク回避になりません。リスクを回避するには、違う値動きをする銘柄を組み合わせることが鉄則です。たとえば、一般的に株式と反対の値動きをすると言われている債券を組み合わせるといった方法が考えられます。
そのほか、日本の株式や欧州株式などを積極的に組み入れている投資信託を選ぶという方法もあります。リスクを回避するなら、どの銘柄をどれくらいの割合で組み入れているかを考慮し、なるべく同じ銘柄が被らないようファンドを選んでみてはいかがでしょうか。
まとめ
新NISAを始めるにあたり、全世界株式(オルカン)と米国株式(S&P500)のどちらを買うか、お悩みの人も多いでしょう。それぞれ優良なファンドであることは間違いありませんが、特徴には違いがあります。
オルカンは全世界の優良株式に投資するため、分散投資が可能です。S&P500は米国の優良企業全体に投資できるため、高いパフォーマンスを期待できます。
どちらを選べば正解ということはないので、本記事を参考にあなたの考えに合うファンドを探してみてくださいね。