金利上昇が投資に与える影響とは?
株・債券・不動産への影響やおすすめ投資法を解説

日本では長年低金利が続いてきましたが、2024年3月のマイナス金利解除により、市場に合わせて金利水準を決める通常の状態に戻りました。

そのため、今後は金利が上昇することを想定し、金利動向に注視しながら投資戦略を考える必要があります。

この記事では、金利がそれぞれの投資商品に与える影響や金利が上がる要因、金利が上昇した際の資産運用方法について詳しく解説します。

今後の投資戦略を立てる目安になりますので、ぜひ参考にしてください。

・目次


金利とは?投資にどう影響するのか

投資に大きな影響を与える「金利」とは、お金を借りたり預けたりする場合に発生する利息や利子の割合のことをいいます。

例えば、金利が年3%の場合、100万円借りる場合は年間3万円を利子として支払います。

逆に、預金などに100万円預ける場合は、年3万円(税引前)を利息として受け取ることになります。

つまり、金利が上がると「お金を預ける側」には有利に働きますが、お金を借りる側からすると、コスト(支払利息)が上がるため、負担が増えるということになります。

利子・利息といった呼び方は、貸し手・借り手の立場の違いで呼び方が異なるだけで、本質的には同じものです。

金利が個人や企業に与える影響

金利の動向は、個人・企業の両方に影響を及ぼします。

例えば、金利が上がった場合、住宅ローン金利も上昇します。その結果、個人の住宅の買い控えが起きるため、不動産価格の下落につながりやすくなります。

企業の場合は、金利が上昇するとお金を借りるコストが上がるため、企業の生産力工場・競争力強化のための投資(新しい工場の建設や機械・設備の購入、ITやデジタル投資、研究開発など)を行いづらくなります。

その結果、企業の成長が停滞し、収益が悪化する可能性が高まるため、株価も下落しやすくなります。

このように、金利が上昇すると消費者の購買意欲や企業の資金調達コストも変化するため、株式市場や債券市場、不動産市場にさまざまな影響を及ぼします。

金利の変動は経済全体の動きに大きな影響を与えることから、金利は投資する際に注目すべき重要な指標のひとつとされています。


政策金利と市場金利の違い

金利は、「政策金利」と「市場金利」の2つに分けられます。それぞれの金利について詳しく解説します。

政策金利の特徴

政策金利とは、中央銀行である日銀が、金融政策の一環として設定する金利です。

政策金利はごく短期の金利で、中央銀行(日本の場合は日銀)が変更しない限り一定です。

日銀は、この金利を上げたり下げたりして金融市場を管理しており、2024年3月にマイナス金利を解除するまで、意図的に金利を低く維持していました。

しかし、マイナス金利が解除された後は、以下のように金利が引き上げられています。

●   0.1%(2024年3月)

●   0.25%(2024年7月)

●   0.5%(2025年1月)

日本では円安や物価高が続いているため、今後も金利が上がる可能性が高いと考えられます。

政策金利は、通常1月・4月・7月・10月の年4回に開催される金融政策決定会合によって決定されます。

金利の上昇・下落によって株式市場や債券市場などが大きな影響を受けるため、投資をする場合は、これら年4回の金融政策決定会合の金利発表を注視しておく必要があります。

市場金利の特徴

市場金利とは、日銀が決める金利ではなく、市場の需給によって決まる金利です。

市場金利には「短期金利」と「長期金利」があり、これらの金利は、民間の金融機関の貸出金利や預金金利、金融機関同士の取引で使われます。

短期市場は政策金利の影響を受けます。また、長期金利は短期金利の影響を受けるため「政策金利」と「短期金利」「長期金利」は密接な関係にあると言えます。

短期金利は貸出期間1年未満の適用金利です。代表的な金利として、銀行間のお金の貸し借りに使われる「無担保コール翌日物金利」があります。

住宅ローンの変動金利は、この短期金利を参照して決定されます。

それに対して、長期金利は、金融機関が1年超の貸し借りの時に適用する金利です。

代表的なものとしては「長期プライムレート」があります。

住宅ローンの固定金利は、この長期プライムレートを参照して決定されるといわれています。

景気が悪くなれば長期金利は下がり、景気が良くなれば長期金利が上がる傾向があるため、長期金利は景気の先行指標としても注目されています。

過去の長期金利の推移については、内閣府の資料「長期金利の推移」も参考にしてください。


金利上昇は投資にプラス?マイナス?

政策金利や市場金利が上昇した場合、金融市場や投資にとってプラスの影響がある場合と、マイナスの影響がある場合があります。

金利上昇が投資に与える影響について、それぞれ詳しく解説します。

金利上昇が投資にマイナスの影響を与える場合

一般的には金利上昇は投資にとってマイナス面が多いため、金利上昇局面では、投資先を慎重に考える必要があります。

金利が上昇すると、企業の借入コストが上昇するため、利益が圧迫されます。

新たな設備投資なども積極的に行われなくなるため、借入を活用して成長しようとする企業は、マイナスの影響を受けやすくなります。

また、金利が上がると債券価格が下がるため、債券に投資している場合は、評価損が出る場合があります。

加えて、不動産の購入コストも上がるため、需要が低下して不動産価格の低下につながるケースがあります。

不動産の価格推移は比較的ゆっくりですが、不動産投資信託であるREITは株式市場で日々売買されているため、金利上昇に伴って価格が下落しやすくなります。

金利上昇が投資にプラスの影響を与える場合

景気が非常に良い環境下で金利が上昇するケースでは、投資にプラスの影響を与える場合もあります。

経済に非常に勢いがある状況下で金利が上昇した場合、企業の資金調達コストが上がるものの、企業活動が活発なまま維持されます。

その結果、企業の将来性への期待が高まり、企業業績も引き続き向上すると予想されることから、株価も引き続き上昇します。

ただし、「日本貿易振興機構(JETRO)」と「内閣府 国民経済計算(GDP統計)」によると実質GDP成長率の推移は以下のようになっており、日本が経済に勢いがある好景気とは判断しづらい状況です。

実質GDP成長率

2023年

2024年(見通し)

日本

1.2%

0.1%

米国

1.9%

2.5%

インドネシア

5.0%

5.0%

タイ

1.8 %

2.8%

フィリピン

5.9%

6.1%

ベトナム

5.0%

5.8%

 

今の日本では、金利が上昇した場合、マイナスの影響が出やすいと覚えておきましょう。


金利上昇の影響を投資商品別に解説

一般的には、「金利が上がると株価が下がる」「金利が下がると株価が上がる」と言われているように、金利は投資に大きな影響を与えます。

ここでは、金利上昇が「株式投資」「債券投資」「不動産投資」「外貨投資」に与える影響について、それぞれ詳しく解説します。

金利上昇が株式投資に与える影響

金利が上昇すると、株式投資には以下のような影響があります。

●   株式市場全体としてはマイナスの影響を受けやすく、株価は下がる傾向がある

●   成長株である「グロース株」は特にマイナス影響を受けやすい

●   高配当銘柄である「バリュー株」は金利上昇の影響を受けにくい

●   銀行株は、収益向上が期待されて株価上昇につながりやすい

●   REITや不動産株はマイナス評価を受けやすい

●   資金の借入残高が多い小売業や商社もマイナスの影響を受けやすい

金利が上昇すると企業の資金調達コストが増えるため、企業利益を圧迫します。これは企業にとってマイナス要因であるため、株価が下落しやすくなります。

特に、金利上昇が継続するような場面では、事業に再投資して将来の成長に資金を投入している成長株、つまり「グロース株」は、パフォーマンスが悪化しやすくなります。

逆に、「バリュー株」と呼ばれる高配当銘柄は、利益をすぐ株主に還元するため、あまり影響を受けない傾向があります。

また、銀行株も、金利上昇の恩恵を受けやすい業種です。金利が上昇すると、銀行の利益が増えると予想され、株が買われる傾向があります。

ただし、国債や債券を多く保有している金融機関の場合は、金利上昇によって国債の評価損が発生するため、決算に悪影響を及ぼす可能性もあります。

財務省が公表している「国債等の保有者別内訳」によると、以下のように銀行や生損保等が一定量の国債を保有していることがわかります。

保有している企業等

割合

日本銀行

52.6%

銀行等

12.1%

生損保等

17.7%

※令和6年9月末(速報)による

金利上昇局面では、一般的には金融機関に有利に働きますが、国債保有額によっては多額の含み損が発生するため、マイナスの影響が大きくなる場合があります。

投資する際は各企業の財務状況を確認し、国債などの債券の保有量を把握しながら検討するようにしましょう。

金利上昇が債券投資に与える影響

債券とは、主に国債や社債のことをいい、以下のような影響があります。

●   金利が上昇すると、過去に発行された債券価格が下がる

●   長期債ほど金利上昇の影響を受けやすい(価格が下がりやすい)

●   既発の債券の流動性が下がり、売りたいときに買い手がみつからない可能性がある

●   社債の発行コストが上がるため、企業の資金調達に悪影響を及ぼす可能性がある

●   新規発行の債券は利率が高くなるため、新規の債券投資は有利

●   価格が下がった債券を購入して満期まで保有することで、高い利回りを得られる

債券は、国や企業などの発行体が破綻しない限り、満期になると必ず元本が返還されるという特徴があります。また、定期的に利息を得られるため、安定した収益を得られる点も魅力です。

しかし、金利が上昇すると、過去に発行された債券の価格は下がるため、満期までの期間に売却すると損失が出る場合があります。

また、債券に主に投資している投資信託やETFの場合も、金利が上昇すると投資先の債券価格が下がるため、価格が下がりやすくなります。

利払いを得るために投資信託やETFを長期保有する場合は、満期までの期間に価格が下がっても問題ありません。しかし、売却する場合は売却損が出る可能性があるため、タイミングを慎重に検討する必要があります。

金利が上昇した場合は、すでに発行されている債券価格は下がるということを覚えておきましょう。

一方で、新規発行の債券は、金利上昇で高い利息を得られるようになります。金利が上昇した場合は、新規の債券投資がおすすめです。

また、「満期まで保有すると元本が償還される」という債券の特性を生かし、価格が下がった債券を購入して満期まで保有することで、高い利回りを得るという投資法もあります。

ただし、金利が上昇すると企業の倒産リスクが高まるため、債券を発行する企業の財務状況などをしっかり確認するようにしましょう。

金利上昇が不動産投資に与える影響

金利上昇が不動産に与える影響は、以下のとおりです。

●   住宅ローン金利や不動産投資ローンの金利が上がり、買い控えが起こる可能性がある

●   返済負担が大きくなり、不動産を売却する人が増える可能性がある

●   持ち家を敬遠する人が増えると、賃貸需要が上がる可能性がある

●   インフレになると賃料も上がるため、不動産投資の利回りが上昇する可能性がある

金利が上昇すると住宅ローン金利が上がります。

そのため、不動産を購入しようと考える人が減り、不動産価格の下落につながる可能性があります。

また、すでに不動産を購入している人で、変動金利でローンを組んでいる場合は毎月の返済負担が大きくなります。

国土交通省の「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、金利タイプ別の割合は、以下のようになっています。

 

令和2年度

令和3年度

令和4年度

全期間固定金利型

3.0%

3.4%

3.9%

固定金利期間選択型

16.6%

13.5%

11.9%

変動金利型

70.0%

76.2%

77.9%

 

今までは低金利が続くことを前提に、「変動金利」で住宅ローンを組む人がほとんどでした。

しかし、今後金利が上昇すると、変動金利による返済負担が増え、住宅ローン返済ができずに不動産を手放すケースも出ると考えられます。

このような動きが大きくなれば、やはり不動産価格の下落圧力になります。

また、不動産投資ローンの金利は、住宅ローン金利よりも高く設定されています。

不動産投資の場合は金利負担がより重くなるため、新規で不動産投資をする人も減る可能史枝があります。このような場合も買い手が減ることから、やはり不動産価格が下落する可能性が高くなります。

日本では長期間低金利が続いており不動産を購入しやすい環境が続いていました。そのため、不動産価格も上昇していたという経緯があります。

しかし、今後金利が上昇していくと、不動産価格が下落する可能性が高いことを覚えておきましょう。

逆に、金融機関から借り入れせずに不動産を購入できる人にとっては、金利上昇で不動産価格が下落するタイミングが購入のチャンスともいえます。

また、金利上昇はインフレ対策として行われることが多く、インフレが進むと賃料も上がり、不動産投資のパフォーマンスが上がる可能性があります。

金利上昇は、現金で不動産を購入できる人や、すでに不動産投資を行っている人にとってはプラスの要因にもなると覚えておきましょう。

金利上昇が外貨投資に与える影響

日本の金利上昇が外貨投資に与える影響は、以下のとおりです。

●   米国との金利差が縮まった場合は円高になりやすい

●   円高になると、すでに保有している米ドル資産の価値が下がる

●   円高になると、今からドル資産に投資する場合は有利になる

海外との金利差が縮小して円高になると、以下のようにより多くの外貨を購入できるため、新規の外貨投資を有利に進められます。

 

1ドル150円

1ドル140円

100万円で買えるドル

約6,666ドル

約7,142ドル

 

ただし、すでに保有している外貨建て資産は、円高になると試算価値が下がるため注意が必要です。

また、日本の金利が上昇すると、わざわざ為替リスクを取って投資しようという人も少なくなります。

その結果、外貨資産の下落につながる可能性があることも念頭に置いておきましょう。


金利上昇時におすすめの資産運用方法

金利が上昇したり低下したりした場合は、金利の動向に対応した資産運用をすることが大切です。

ここでは、金利上昇時と金利低下時におすすめの投資方法について解説します。

債券の割合を増やす

今まで株式を中心にポートフォリオを組んでいた場合、金利上昇局面では、資産配分を見直し、高い金利が得られるような資産に移行していくことが大切です。

例としては、株式投資の割合を減らし、個人向け国債や社債などを組み入れることが挙げられます。

特に、価格下落のリスクが少ない、短期の債券や金利変動型の債券がおすすめです。

ただし、社債の場合、金利が上昇すると企業の金利負担が上がることになります。

そのため、金利上昇局面でも堅実な経営ができるような、財務体質が良い企業の社債を選ぶことが大切です。

金融株や高配当株にシフトする

金利が上昇した場合は株が下落しやすくなりますが、株式投資をやめるのではなく、金利上昇で恩恵を受けるような株にシフトしましょう。

具体的には、銀行や保険、商社などの銘柄がおすすめです。

ただし、金利上昇で株価が下落する局面では、将来大きな成長が見込まれる、将来性が高い成長株(グロース株)を安値で手に入れられるチャンスとも言えます。

長期保有を前提にした投資の場合は、市場の動きに連動して下がってしまった成長株は「買い時」ともいえます。

金利上昇時の株式投資では、投資期間も考慮しながら投資先銘柄を考えるようにしましょう。


日本の金利動向を予想しながら投資することが重要

金利の動向は投資に大きな影響を与えるため、自分なりに金利の動向を予測しながら投資をすることが大切です。

ここでは、どのような要素が金利に影響を与えるのかということについて、くわしく解説します。

インフレ率上昇の影響

金利に最も影響を与える要素のひとつが「インフレ率」です。

一般的に、インフレ(物価上昇)が加速すると、物価高を抑えるために金利が引き上げられるケースが多くなっています。

そのため、毎月発表される「消費者物価指数」を注視する必要があります。

総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」によると、2024年から2025年にかけての消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、以下のようになっており、少しずつインフレが進んでいることがわかります。

 

消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)

2024年8月

2.8%

2024年9月

2.4%

2024年10月

2.3%

2024年11月

2.7%

2024年12月

3.0%

2025年1月

3.2%

 

日銀は、「物価安定の目標」として、消費者物価の前年比上昇率2%を掲げています。

上記のように、消費者物価の3%台が続いた場合は、物価上昇率を抑えるために、日銀が金利を上げる可能性があるといえます。

今後の金利動向を予想するひとつの目安として、消費者物価指数の結果に注目するようにしましょう。

海外金利の影響

日本の金利は、海外の金利動向にも大きな影響を受けます。

例えば、海外の金利が上がり、日本の金利が現状維持の場合、海外との金利差が開いて円安が進む可能性があります。

2021年から2022年にかけて、世界各国はコロナによる経済不安を避けるため、多くの資金を市場に投入しました。その結果インフレ率が急上昇したため、世界各国の中央銀行は政策金利を大幅に上げて、インフレを抑制するという対応を取りました。

しかし、日本では当時も低インフレ・デフレの状態が続いていたため、各国が金利を引き上げているにもかかわらず、日銀はマイナス金利政策を継続しました。

この政策の違いで海外の金利と日本の金利差が大きく開いたため、ここ数年にわたる大幅な円安のきっかけとなったという経緯があります。

また、海外の金利が高く、日本の金利が低いという状態が続くと、利率が低い日本国債の価値が下がります。

その結果、海外投資家が日本の国債を売る、つまり「円を売って、ドルなどを買う」という動きにつながるため、円安がより進む可能性があります。

円安になると、輸入品の価格が上がるなどして日本のインフレが加速しやすくなるため、海外との金利差を小さくするために、日銀が日本の金利を上げる可能性があります。

金利の動きを予想する際は、海外金利の動きも中止するようにしましょう。

賃金上昇の影響

金利は、労働市場の状況や賃金の動向にも影響を受けます。

一般的に、賃金が上昇すると消費が活発になりインフレになりやすいため、中央銀行は金利を引き上げる傾向があります。

日本では、長年にわたり賃金の伸びが低迷していましたが、2023年頃から大手企業を中心に、賃上げの動きがみられるようになりました。

今後も賃金の上昇が持続的と判断された場合は、金利引き上げの要因になる可能性があります。

日銀が参照するのは「毎月勤労統計調査(厚生労働省)」や「賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」、「労働力調査(総務省統計局)」などがありますので、金利の動向を予想する際はぜひ参考にしてください。

日銀が国債を大量保有している影響

日銀は日本国債を大量に保有しています。令和6年6月末時点での保有高は588.5兆円となっており、発行済国債の実に50 %以上を保有している状態です。

日銀が金利を引き上げると、すでに発行されている日本国債の価格が下がり、日銀の評価損が発生します。

実際に2023年9月末時点では、国債の評価損が13兆円あまりに拡大しており、今後も金利が上昇した場合、日銀の評価損がより拡大すると考えられます。

日銀は国債を満期まで保有することが前提となっているため、時価での評価損は紙の上のことで、すぐに悪影響があるわけではありません。

しかし、日本国債の評価損が拡大して日本の中央銀行である日銀の信頼性が揺らぐことがあれば、日本円の信頼も崩れるリスクがあります。

また、今後日銀が金利を継続的に引き上げた場合、今後3年間で国債の利払い費が5割余り上昇するとされていることもあり、日本政府の負担も増加すると考えられます。

このように、今の日本では「金利が上がると日本政府の利払い費が増加し、日銀の評価損も増える」という構造的な問題を抱えているため、スムーズに金利を上げにくい状態にあることも念頭に置いておきましょう。


金利と投資についてよくある質問

金利と投資について、よくある質問を紹介します。

なぜ金利が変動すると為替に影響があるのですか?

金利の変動は、各国の通貨の魅力に影響を与えるため、資金の流れを変え、為替レートを動かすことになります。

例えば、米国の金利が上昇すると、投資家はより高い利回りを求めて米ドル資産を購入するため、ドル高になります。ここ数年は円高ドル安だったため、外貨資産に多くの資金が流入しました。

しかし、日本の金利が今後上昇していけば、円が買われるため円高が進む可能性があります。

特に、日本の金利が上昇し、米国の金利が下がった場合は、金利差が一気に狭まり円高が急激に進む可能性があることも念頭に置いておきましょう。

金利上昇時に有利な投資商品を教えてください。

金利が上昇すると預金金利が上がるため、定期預金などの安全資産の魅力が向上します。

また、以下のような金融商品もおすすめです。

●   高配当株や金融株、商社株

●   新たな債券投資(特に短期のものがおすすめ)

●   価格が下がった高利回りのJ-REIT

金利上昇時に強いといわれる投資商品にバランスよく分散投資すると良いでしょう。

ゼロ金利が解除された今、投資戦略をどう変えるべきですか?

ゼロ金利が解除されて金利が上昇すると借入コストが上がるため、成長株や不動産市場への投資は慎重に行う必要があります。

一方で、金利上昇で利益を得られる金融関連株や高配当株は有利になる可能性があります。

また、新規の債券投資の魅力も高まります。

今まで成長株投資をメインにしていた場合は、株式の銘柄を変更したり、債券投資を組み入れたりすると良いでしょう。


まとめ

金利が上昇すると、株や債券価格、不動産価格は下落する傾向があります。しかし、金融株や高配当株を組み入れることで利益を得やすくなりますし、新規の債券投資であれば高い利息を得られる可能性が高くなります。

日本では長く低金利が続き、株式投資に大きなメリットがありましたが、今後は金利が上昇していくことが見込まれます。

株式投資のみ行っていた人は、金利上昇時にメリットがあるものをポートフォリオに組み入れて、バランスの良い投資を目指すようにしましょう。


伊藤久実 

伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。