国債のメリットとは?
基本的な仕組みやデメリット、ほかの金融商品との違いも解説
国債という言葉を知っている人は少なくないでしょう。安全な金融資産だと言われている一方で、国債はやめたほうがいいという意見を聞いたことがある人もいるかもしれません。そこでこの記事では、そもそも国債とは何か、基本的な知識からメリット・デメリット、ほかの金融商品とは何が違うのかまで、初心者にもわかりやすく解説していきます。
・目次
国債とは|国が発行する債券のこと
国債とは、国が発行する債券のことを指します。債券とは、資金を調達するために発行する有価証券で、借用証書のようなものです。
債券には発行する団体の違いにより、以下の種類があります。
・国債 → 国が発行する債券 ・地方債 → 地方自治体が発行する債券 ・社債 → 企業が発行する債券 |
日本国が発行する国債は、日本国債とも呼ばれます。国が国債を発行するのは、税金では賄いきれない、社会保険の整備や各種インフラ事業などの資金を調達するためです。
基本的な仕組みや特徴
国債を購入するということは、国にお金を貸すということです。お金を貸す期間はあらかじめ設定され、その期間内には利息が支払われます。期限が過ぎれば元金は返却されるという仕組みです。
債券の返済期限や利息などの条件は、一般的な借用証書と大きな違いはありません。ただしお金を貸すのが『国』というとても信用力の高い相手なので、国債は安全性が高い金融資産です。国が破綻しない限り元本は保証され、利息も受け取れます。
国債は個人でも購入でき、一定期間を置けば売買も可能です。価格は情勢や需要、供給などに応じて変動します。
価格は金利が上昇すれば下落し、反対に金利が下落すると上昇する傾向にあります。
3%の利率で3年満期の国債を例に考えてみましょう。
●銀行の定期預金の金利が、
4%の場合 → 国債のメリットが薄れて価格が下落
2%の場合 → 国債の金利の方が高いため価格が上昇
満期まで保有していれば元本は返還されますが、途中で売買する場合は価格の変動があることを覚えておきましょう。
国債の種類
国債にはいくつか種類があります。それぞれの特徴をご紹介していきます。
固定利付国債と変動利付国債
まずは固定金利と変動金利という、金利の付き方による違いがあります。
【固定利付国債】 発行時に利率が決められており、満期まで変動しない。 【変動利付国債】 利息が市場の金利水準に合わせて変動する。 |
変動金利型であっても、最低保証金利(0.05%)が設定されているので安心です。
利息はどちらも半年に一度受け取れます。このほか、利息を受け取らない代わりに、額面よりも安く発行される「割引国債」があります。
個人向け国債
個人向けに発行される国債です。1万円から購入でき、3年と5年の固定利付国債、10年の変動利付国債があります。
個人向け国債は、発行後1年以上経過していればいつでも国が買い戻してくれます。元本割れのリスクはありませんが、中途換金をする場合は、手数料として解約直前2回分の利息が差し引かれるので注意しましょう。
個人向け国債は毎月発行しており、証券会社や銀行、郵便局などで購入できます。
新窓販国債
新窓販国債は、個人だけでなく法人やマンション組合なども購入できます。最低5万円から、5万円単位で購入でき、2年・5年・10年の固定金利です。ほぼ毎月発行されており、個人向け国債と同じく証券会社や銀行、郵便局などで購入できます。
個人向け国債より短い期間(2年)を選べ、同じ期間の場合はほかの国債よりも金利が高い特徴があります。ただし国による中途換金の制度はないので、満期前に売却するには、金融市場での取引が必要です。市場における債券価格は変動するため、満期前の売却は元本割れのリスクがあります。
※満期まで保有している場合、元本割れのリスクはほぼありません。
そのほかの国債
国債はそのほか、償還期間(満期)の長さによって区別したり、特殊なものがあったりします。個人で購入できるのは「個人向け国債」と「新窓販国債」の2種類ですが、個別で購入できなくても投資信託を通じて投資が可能な場合もあるので、簡単にご紹介していきます。
種類 |
特徴 |
物価連動国債 |
物価動向によって元本が変動する特殊な国債。物価が上昇すると、元本も増額する。 |
超長期国債 |
償還期間が10年を超える国債。 |
長期国債 |
国債の中でもベースとなる、償還期間が10年の国債。 |
中期国債 |
償還期間が、2年~5年程度の国債。 |
短期国債 |
償還期間が1年未満で、利子が付かない割引国債。国庫短期証券ともいう。 |
国債といえど長期保有には多少のリスクがあるため、一般的に償還期間が長ければ長いほど金利は高くなる傾向にあります。
このほか、国債の目的によって名称が区別されることもあります。
【建設国債】 国債の目的が「公共事業にあてるため」で、将来への投資です。いわゆる普通の国債だととらえればよいでしょう。 【赤字国債】 国の財政赤字を補填するための国債です。法律上、赤字国債の発行は認められていませんが、国で特例を設定して発行しています。 |
米国債などの外国債券について
外国債券とは、発行体や発行市場、発行通貨のいずれかが外国、もしくは外国通貨である債券のことです。発行体には国だけでなく、政府関係機関や民間企業も含まれますが、ここでは米国債といった外国の国債について、メリットとデメリットを簡単にご紹介します。
【外国国債のメリット】
日本国債と同様、外国国債も国家が破綻しない限り元本が保障されるため、比較的安全性が高いと言えます。
また、日本国債よりも利回りが高い外国国債が多いです。参考までに、2025年1月における主要各国の10年国債利回りをご紹介します。
指標 |
年利回り |
日本国債10年 |
1.210 |
米国国債10年 |
4.526 |
ドイツ国債10年 |
2.578 |
イギリス国債10年 |
4.602 |
フランス国債10年 |
3.321 |
ユーロ圏国債10年 |
2.578 |
イタリア国債10年 |
3.679 |
ギリシャ国債10年 |
3.455 |
2025年1月30日時点
このように利回りが高いというメリットもありますが、デメリットもあります。
【外国国債のデメリット】
一番に考えられるのは、為替変動リスクです。償還時や売却時に、購入時よりも円安であれば為替差益を得られますが、反対に円高であれば為替差損が発生します。外貨ベースで利益が出ていても、円に換算すると損失を被る可能性があるので注意しましょう。
また、国の信用リスクも考慮しましょう。信用リスクとは、デフォルト(債務不履行)が発生する可能性のことです。特に新興国の場合は利回りが高い代わりに、デフォルトのリスクも高くなります。投資先の国の情勢が不安定になると、損失が発生するかもしれません。
国債である以上、外国国債も比較的安全な資産といえますが、当然リスクもあります。投資を考える場合は、金利の高さだけでなくリスクも考慮しましょう。
国債のメリット
国債の安全性の高さはすでに触れた通りですが、そのほかのメリットも併せて詳しくご紹介していきます。
安全性が高くて低リスク
国債の一番のメリットは、やはり安全性の高さでしょう。国が破綻しない限り、元本が保証され利息を受け取れるので、非常にリスクが低いと言えます。
個人向け国債であれば、1年以上保有していればいつでも国が買い取ってくれるため流動性も高いです。ただし新窓販国債を売却する場合は、元本割れしないよう注意しましょう。
少額から購入できる
個人向け国債は1万円から、新窓販国債は5万円から購入が可能です。
特に投資初心者の場合は、大きな金額を投資するのが不安という人も少なくないでしょう。国債であれば、安全性が高い上に少額から投資できるので、投資初心者にも安心です。
毎月購入できるので、積立投資のように運用することもできます。
手数料がかからない
国債は、購入手数料や口座維持手数料などが発生しないことも、メリットのひとつです。
通常、株式投資や投資信託などは売買手数料や口座維持手数料などがかかるケースが多いですが、国債の場合は国がその手数料を負担します。
ただし、満期前に中途換金したり売却したりすると、手数料が発生するので注意しましょう。前述したとおり、個人向け国債を中途換金すると前後2回分の利息が手数料に当てられます。
新窓販国債を市場で売買する場合、金融機関が定めた手数料が発生する可能性があるため、事前に確認してみてください。
定期預金よりも金利が高い
個人向け国債は、最低でも0.05%の金利が保証されており、定期預金よりも金利が高いことが多いです。
参考までに、2025年1月に発行された個人向け国債の金利をご紹介します。
変動10 |
固定5 |
固定3 |
0.75%(税引前) |
0.77%(税引前) |
0.62%(税引前) |
最低金利である0.05%の時代が長らく続いていましたが、近年では変動金利・固定金利ともに上昇の兆しを見せています。
定期預金の金利も徐々に上昇していますが、比べると個人向け国債の利率の方に軍配が上がります。ただし金利水準や経済状況によっては逆転する場合もあるので、都度確認してみてください。
このように国債は安全でリスクが低く、手軽に購入できるうえに定期預金よりも金利が高いというメリットがあります。
国債のデメリット
国債には多くのメリットがある一方、「国債はやめておけ」という意見を聞いたことがある人もいるかもしれません。ではなぜそのように言われるのか、デメリットをご紹介していきます。
ほかの金融商品より金利が低い
定期預金よりも金利が高いとはいえ、株式投資や投資信託などほかの金融商品と比べると、金利は低い傾向にあります。
その分安全性が高いことは間違いありませんが、金利を重視する運用においては、あまり向いているとは言えません。
インフレに弱い
国債は償還日まで保有していれば元本は保証されますが、増えることもないためインフレのリスクがあります。
インフレとは物価の価値が上昇することですが、それはつまりお金の価値が下がるということです。たとえば1万円で購入できたものが、1万2,000円出さなければ購入できなくなれば、1万円自体の価値が下がっていると言えるでしょう。
国債は額面通りに返済されるため、インフレが進むと資産価値が下がることになります。
ただし国債には利息が付くため、多少インフレが進んでも価値の目減りは緩和されます。特に変動利付国債であれば、市場の動向に応じて金利が変化するので、インフレにもある程度対応可能です。
中途売却すると元本割れのリスクがある
新窓販国債を中途売却するには、市場で取引しなければなりません。購入時よりも価値が下がっていると、元本割れする可能性もあります。
中途売却する場合は、市場動向をよく確認して損失が出ないよう注意しましょう。個人向け国債には中途換金の制度があるので、元本割れのリスクはありません。途中で解約する可能性があるなら、個人向け国債を選ぶとよいでしょう。
1年間は換金できない
個人向け国債を中途換金するには、発行後1年以上経過している必要があります。1年間は換金できないため、国債は余剰資金で購入しましょう。
新窓販国債には1年という縛りはありません。いつでも市場で自由に売買できますが、損失が発生しないよう注意してください。
デフォルトになると損失を被る
国債は安全性が高い金融資産ですが、発行している国がデフォルト(債務不履行)に陥ると、損失を被る可能性もあります。
デフォルトとは簡単に言うと、借金を返済できない状態になるということです。実際に、過去ギリシャがデフォルト危機に陥ったことを覚えている人もいるでしょう。
デフォルトが起こったり、デフォルト危機に陥ったりすると、国債の価値は著しく低下し、損失が発生します。
日本国債の場合、自国通貨建てで発行しているため、デフォルトの危険は少ないと言われています。あまり過剰な心配はいりませんが、新興国の国債等を購入する場合は注意しましょう。
ほかの金融商品との違いは何?
国債のメリットとデメリットを理解したところで、ほかの金融商品との主な違いについてご説明していきます。
金融商品 |
主なメリット |
主なデメリット |
国債 |
・安全性が高い |
・金利が低め |
定期預金 |
・安全性が高い |
・金利がかなり低め |
投資信託 |
・運用をプロに委託できる |
・元本保証はない |
株式 |
・大きな利益を期待できる |
・リスクが比較的高い |
以上の特徴を踏まえて、それぞれの金融商品に向いている人をご紹介していきます。
国債に向いている人
国債は安全性が高く、低リスクです。金利が高くないものの利息もつくため、安全に資産を運用したい人や定期的に利益を受け取りたい人に向いています。
中途換金を利用すると、換金も容易です。また預金保護制度は1,000万円までなので、それよりも大きな資産を安全に運用したい場合にも適しています。
定期預金に向いている人
定期預金は預金保護制度の対象です。1,000万円までの預け入れであれば預金が保護されるため、安全性は高いと言えます。
すぐに引き出すこともできるため、流動性も非常に高いです。ただし、金利はあまり期待できません。普通預金よりは良いものの、資産を増やすことは難しいです。
投資信託に向いている人
投資信託は、運用をプロに任せられることが大きなメリットです。元本保証はありませんが、比較的リスクを抑えられます。
また自分で銘柄を選ぶ必要がないので、ほったらかし投資をしたい人や、分散投資をしたい人にも向いているでしょう。
そのほか、長期的な視野を持って資産運用したい人やNISA、iDeCoを利用したい人にもおすすめです。
株式に向いている人
積極的に資産運用を行いたい、利益を得たい人には株式投資が向いています。自分で市場の分析を行ったり、投資に時間をかけたりすることが可能であれば、なおさらおすすめです。
ただしこの中では一番リスクが高い金融商品といえます。選ぶ銘柄によってリスクは大きく異なるため、慎重に運用しましょう。
投資信託や株式について詳しく知りたい場合は、 |
投資信託や株式について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。 |
国債の買い方
国債は、取り扱いのある金融機関で購入できます。どこで購入しても利率等の発行条件は変わりません。
証券会社や銀行などの金融機関を選ぶ
国債は、証券会社だけでなく都市銀行、地方銀行、ゆうちょ銀行、信用組合、農業協同組合などさまざまな金融機関で購入が可能です。
国債を取り扱っている金融機関は、財務省のホームページからも確認できます。
どの金融機関で購入しても、利率や手数料(無料)などの発行条件が変わらないのはお伝えした通りです。ただし、金融機関によって取り扱っている国債の種類は異なります。
そのほか独自のキャンペーンを行っている金融機関もあるので、取扱っている国債の種類やキャンペーンなどは事前によく確認しましょう。窓口に出向くのが面倒であれば、ネット証券での購入も可能です。
また、これを機にさまざまな資産運用を検討しているなら、その点も考慮して選ぶとよいでしょう。たとえば銀行では国債のほか投資信託も扱っていますが、株式は証券会社でしか購入できません。希望する投資を行える金融機関を選んでくださいね。
国債用の口座を開設
始めて国債を購入する場合は、金融会社に国債用の口座を開設する必要があります。たとえば銀行にすでに口座を持っていても、その口座で国債を購入することはできません。
口座を開設するには、マイナンバーカードや運転免許証、健康保険証などの本人確認証や印鑑などが必要です。そのほかに必要なものは、口座を開設する金融機関に確認してみてください。
金融機関によっては口座開設までに時間がかかることもあるので、余裕をもって行いましょう。
購入する国債や金額を決める
個人が購入できる国債には、いくつか種類があります。どの国債をどれくらい購入するのか検討しましょう。国債は1万円から購入できますが、キャンペーンを利用するには購入下限が設けられていることもあります。
また国債は毎月発行していますが、募集期間が定められています。金融機関によって多少期間が前後するので、注意してください。
<新窓販国債を購入するときの注意点>
新窓販国債は、発行日から初回の利子が支払われるまでの期間がぴったり半年とは限りません。そのため、半年に満たない分の利子を購入時に支払う必要があります。
初回の利子支払い時には満額の利子を受け取れるため、購入金額が増えるわけではありません。
【参考】中途換金をするときは
個人向け国債を中途換金したい場合は、金融機関で申し込みをすると、およそ3~4営業日以内に換金されます。
中途換金は、発行してから1年以上経っていることが条件です。保有しているすべての国債ではなく、一部だけ換金もできます。
ただし、口座名義人が死亡した場合や災害救助法の適用対象となった場合は、1年未満でも換金可能です。
まとめ
国債は、国が必要な資金を調達するために発行する債券です。国債を購入すると、償還日には元本が返済され、その間は利子を受け取れます。個人が購入できる国債は、個人向け国債と新窓販国債の2種類です。
国債は国が発行しているためとても安全性が高く、リスクが低い金融商品です。少額から投資でき、定期預金よりも金利が高いといったメリットがあります。ただし、投資信託や株式などと比べると利回りは低く、積極的な投資には向かないかもしれません。
安全に資産運用したい人にはとても向いている金融商品なので、ぜひ上手に活用してみてください。