PTSとは?
仕組みや夜間取引のメリット・PTS活用法まで詳しく解説
株の取引は証券取引所が開いている時間のみ可能ですが、PTS取引を使うと、早朝や夜間、夕方など幅広い時間帯で株取引が可能です。
PTS取引を利用すると、米国市場が開いている時間も株取引ができるため、市場の変化に合わせた柔軟な対応が可能です。
この記事では、PTS取引の仕組みや特徴、メリットやデメリットについて解説します。PTSが向いている人についてもくわしく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
・目次
PTSとは?
PTS(Proprietary Trading System)とは、日本の証券取引所を介さず株取引ができる、証券会社などが独自に運営する私設取引システムのことをいいます。
簡単に言うと、PTSは「証券取引所の取引時間外でも、株取引ができるシステム」です。
一般的な証券取引所では、限られた時間内でしか株取引ができません。
しかしPTSを使うと、取引時間外である夜間や早朝・昼休み・夕方でも株取引が可能です。
一般的な会社員や日中忙しい人にとっては、証券取引所の時間内に落ち着いて取引することは難しい場合も多いでしょう。
しかし、PTSを利用すれば自分のライフスタイルに合った時間帯で株取引が可能になります。
また、米国市場の動向を見ながら取引したい人や、急な価格変動が発生した時に迅速に対応したい人にとっても、PTSは魅力的な選択肢と言えます。
日本国内では、ジャパンネクスト証券が「ジャパンネクストPTS」、Cboeジャパン株式会社が「CboePTS」を運営しています。
ジャパンネクストPTSは、国内外の大手証券会社を中心に、30社以上の証券会社が取引参加しており、東京証券取引所に次ぐ国内第二位の規模を誇っています。
PTSと夜間の注文取引との違い
通常の株取引では、次の日に証券取引所がスタートした時のために、あらかじめ夜間に指値や成り行きの株取引の注文を出しておくことがあります。
しかし、これはあくまでも次の日のための予約注文であり、リアルタイムで株取引ができるわけではありません。
それに対して、PTSは夜間にリアルタイムで株取引を行えるため、その場で実際に注文を出して約定させることが可能です。
PTSは実際の市場や銘柄の動向を確認しながら、リアルタイムで株取引できることが大きな特徴といえます。
PTSと通常の証券取引所の違い
PTSと通常の証券取引所では、さまざまな点で違いがあります。あらためて、それぞれの違いを詳しくみていきましょう。
運営主体の違い
PTSと通常の証券取引所(東証など)は、まず運営主体が違います。
東京証券取引所は、金融商品取引法上の金融商品取引持株会社である、日本取引所グループが運営しています。
一方、PTSを運営するCboeジャパンやジャパンネクスト証券は、どちらも株式会社となっています。
取引時間の違い
通常の証券取引所(東証など)の取引時間は、9:00~11:30(前場)、12:30~15:30(後場)と時間が限定されています。
一方で、2種類のPTSの取引時間は以下のとおりです。
PTSの種類 |
取引時間 |
CboePTS |
8:20~16:00 |
ジャパンネクストPTS |
8:20~16:00(デイタイムセッション 17:00~23:59(ナイトタイムセッション) |
米国株式の取引時間は、日本時間で23:30~翌朝6:00(サマータイムでは22:30~5:00)です。
ジャパンネクストPTSのナイトセッションでは、夜間は23:59まで取引できるため、米国市場開始後の動きに合わせた、柔軟な取引が可能になります。
また、証券会社によって利用できるPTSが異なることも特徴です。
例えばA証券ではジャパンネクストPTSのみ、B証券ではジャパンネクストPTSとCboePTSの両方が利用できる仕組みになっています。
PTSを利用したい場合は、どのPTSを使えるかによって、株取引の時間が変わってくるため、事前に確認するようにしましょう。
手数料やコストの違い
PTSの取引手数料は証券会社によって異なります。また、証券会社によっては手数料よりも安く設定されている場合もあり、コスト面で有利な取引ができる場合があります。
ただし、証券会社によってはPTS取引に追加手数料がかかる場合もあるため、事前に確認することが大切です。
流動性や出来高の違い
PTSは通常の証券取引所と比べて流動性が低く、希望する価格で約定しにくい場合があります。
また、大口の注文によって価格変動が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。
PTS市場でスムーズに株取引したい場合は、多くの人が取引きしている銘柄を選ぶことがポイントです。
デイタイムセッションやナイトタイムセッションの出来高ランキングを公表しているサイトもありますので、参考にすると良いでしょう。
PTSのメリット
PTSには、「夜間取引ができる」という大きなメリットがあります。
それに加えて、PTSには以下のようなメリットもありますので詳しく紹介します。
細かい指値設定ができる
PTSでは、通常の取引所よりも細かい価格単位で指値注文を出せることがあります。
例えば、東京証券取引所では1円単位の価格であるところ、PTSでは0.1円単位で注文を出せたりします。
細かな指値設定ができると、希望する価格で約定しやすいというメリットがあります。
証券取引所とPTSを比較し有利な方を選べる
証券取引所とPTSで取引が重なる時間帯には、両方の価格を比較して、「より安い価格で買う」「より高い価格で売る」ことが可能です。
両方を比較してより有利な市場で取引できることも、PTSのメリットとなっています。
配当や株主優待の権利も通常通り得られる
PTSで株式を購入した場合でも、通常の証券取引所で購入した場合と同様に、配当金や株主優待の権利を得ることが可能です。
ただし、PTS夜間取引の場合は、権利付最終日が1日前倒しされるため注意してください。
海外の市場環境変化に対応できる
PTSの夜間取引を利用することで、米国市場の状態に柔軟に対応した取引が可能になります。
例えば、米国市場で市場の急変が起きた場合でも、PTSを利用すると翌営業日を待たずに素早く対応できます。
このように、PTSを利用することで、より細やかなリスク管理ができるというメリットがあります。
PTSのデメリット
PTSには、証券取引所と比較していくつかのデメリットもありますので、あらためて紹介します。
流動性が悪く注文が成立しにくい
PTSでは証券取引所に比べると取引参加者が少なく流動性が低いため、大口の注文が通りにくいことがあります。
また、株式の売買は、売り手と買い手がいて初めて成立するものです。
そのため、市場参加者が比較的少ないPTS市場では、通常の注文であってもなかなか約定せず、希望価格での取引ができない場合もあります。
取引できる銘柄が限られる
PTSで取引ができる銘柄は約4,000となっており、証券取引所に上場しているすべての銘柄を取引できるわけではありません。
また、利用する証券会社によっても取り扱っている銘柄が異なります。
PTSを利用する場合は、取引したい銘柄が扱われているかを事前に確認するようにしましょう。
価格変動が大きくなる可能性がある
PTSでは流動性が低く、取引参加者も少ないことから、急な価格変動が起こる場合があります。
市場状況をこまめに確認しながら注文を出すようにしましょう。
PTSを対応している証券会社一覧【2025年最新版】
2025年現在で、PTS取引を提供している主な証券会社は、以下のとおりです。
● SBI証券
● 楽天証券
● 松井証券
それぞれの証券会社によって、取引できる銘柄や手数料が異なるため、比較して選ぶようにしましょう。
PTSの始め方と注文方法
PTSを利用するためには、まずPTSを取り扱っている証券会社で通常の証券口座を開設します。
口座開設はWEB上でできる場合が多く、本人確認書類が必要です。口座を開設後、自分の証券取引口座に資金を入金し、売買注文を出します。
最近はアプリを利用して簡単に売買注文を出せるため、スマホにアプリをインストールすると良いでしょう。
多くの証券会社では、通常の売買注文時に「PTS」を選択することで、PTS取引ができます、
また、証券会社によっては、複数の市場から最良の価格を自動的に選択して、注文を執行できる「SOR注文」を選べる場合もあります。
PTSがおすすめの投資家タイプは?向いている人・向いていない人の特徴
PTSは幅広い時間帯で株取引ができる仕組みですが、PTSには特有のリスクや制限があるため、すべての投資家にとって最適な方法とは限りません。それでは、PTSはどのような投資家に適しているのでしょうか。
ここでは、PTSが向いている人・向いていない人について紹介します。
PTSに向いている人
PTSに適している人・向いている人は、以下のとおりです。
● 会社員など、日中取引ができない人
● 手数料をできるだけ抑えたい人
● 米国市場の変化に柔軟に対応したい人
PTSでは夜間取引や早朝取引が可能なため、日中忙しく落ち着いて取引できない人や、米国市場が開いている時間にリアルタイムで取引したい人に向いています。
また、PTSでは手数料が安いことも多いため、できるだけコストを抑えて取引したい人にもおすすめです。
PTSが向いていない人
PTSが向いていない人は、以下のとおりです。
● 流動性が高い市場で取引したい人
● さまざまな銘柄を取引したい人
● 初心者で取引そのものに慣れていない人
PTS市場は人気がある銘柄は活発に取引が行われるものの、出来高が少ない銘柄は買い手や売り手がおらず、注文が成立しないことがあります。
どの銘柄でもスムーズに取引したい人は、通常の証券取引所を利用しましょう。
また、価格変動が大きくなることがあり、価格が予測しにくい動きをすることもあります。株取引がまだ不慣れな初心者もPTS取引は向いていないといえるでしょう。
PTSでよくある質問
PTS取引について、よくある質問を紹介します。
夜間取引での約定日や受渡日はいつになりますか?
証券会社により異なる場合もありますが、ある証券会社のPTS取引時間は以下のようになっています。
デイタイムセッション(8:20~16:30) |
売買成立日を約定日とし、2営業日後が受け渡し日となる。 |
ナイトタイムセッション(17:00~23:59) |
売買成立日を約定日とし、約定日から3営業日後が受け渡し日となる。 |
ナイトタイムセッションでは、受渡日が3営業日後となるため注意しましょう。
権利付最終日の夜間取引で買付した場合権利は得られますか?
ナイトタイムセッションで取引した場合、受渡日は3営業日後となるため、権利は得られません。
夜間取引の場合は、通常よりも1日早く約定する必要があると覚えておきましょう。
PTS取引には特別な申し込みや手続きが必要ですか?
PTS取引に特別な手続きは必要ありません。PTS取引が可能な証券会社の口座を保有していれば、誰でもPTS取引は可能です。
まとめ PTSを活用して取引の幅を広げよう!
PTSでは証券取引所の時間外でも株取引ができるため、市場に合わせた柔軟な対応が可能です。特に、夜間の取引もできることから、日中に取引ができない投資家や、海外市場の動向に合わせて柔軟に取引したい投資家に向いています。
一方で、PTSには流動性が低い銘柄があるため、約定しづらい場合があります。また。価格変動が大きくなるケースもあるため、注意が必要です。
リスク管理をしてPTSを利用することで、取引の幅を広げ、より戦略的な投資が可能となります。PTSを取引手段のひとつに加え、積極的に活用すると良いでしょう。
伊藤久実
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。