確定申告のメリットとは?
会社員・個人事業主の節税術や赤字の活用法
確定申告は会社員にメリットがないと思われがちですが、実は申告をすることで税金の還付や節税につながる場合があります。
また副業をしている会社員や個人事業主の場合は、確定申告をすることで赤字の繰越ができるなどのメリットがあります。
会社員の確定申告は義務ではありませんが、節税につながる可能性がある場合は、確定申告をして税金の還付を受けるようにしましょう。
この記事では、会社員と個人事業主が確定申告をするメリットについてわかりやすく解説します。
また、節税や赤字の活用方法、e-Tax(イータックス)を使った確定申告方法まで詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
・目次
確定申告とは?会社員もメリットがある?
確定申告は、会社員にはメリットがないと思われがちですが、個人の状況によっては税金を減らせる場合があります。
そもそも確定申告とは、1年間の課税所得金額を正確に把握し、それによって所得税や住民税の額を確定させることをいいます。
個人事業主やフリーランスは売上や経費などを申告して納税する必要があるため、多くの場合、確定申告が必要です。
一方で会社員は、勤務先が年末調整を行い、給与所得控除や各種控除を反映させた最終的な税額を計算するため、基本的には確定申告は不要です。
ただし、会社員の人でも、以下のような場合は確定申告をすることで、支払った税金を取り戻せる可能性があります。
- 家族全員分の年間医療費が10万円を超えた場合
(年収が200万円以下の人は、所得の5%を超えた場合) - 家族全員分の薬代(一定の条件を満たしたもの)が年間で12,000円を超えた場合
- 住宅ローンを組んで1年目の場合
- ふるさと納税で寄付をした場合
- 自然災害や盗難等で資産に損害を受けた場合
- 投資で損失が出た場合
- 副業していて赤字になった場合
- 年度途中に退職して再就職せず年末調整をしていない場合
- 年末調整後に出産した場合
- 年末調整後に結婚した場合
- 年末調整後に両親などの面倒を見始めた場合
このような場合は、確定申告で税金の還付を受けられる可能性があるため、条件に当てはまる人は確定申告をするようにしましょう。
それでは、まずは確定申告をすることで税金が減る仕組みについて解説します。
確定申告のメリットは所得税と住民税を減らせること
会社員の場合は、一般的には会社が年末調整を行ってくれます。
年末調整とは、「扶養控除」「配偶者控除」などの所得控除を反映し、正確な税額を確定させる手続きのことをいいます。
会社は、毎月概算で「税金分」を給与から徴収しています。
そして、年末調整に提出された書類によって正確な課税所得金額を確定させ、徴収しすぎていた税金を1月に給与と一緒に還付しています。(足りなかった場合は、追加で徴収する場合もあります)
このように、会社員の場合は年末調整で完結するため、基本的には自分で手続きをする必要はありません。
しかし、なかには「寄付金控除(ふるさと納税)」や「医療費控除」など、自分自身で確定申告をしないと、申告できない所得控除があります。
このような「自分で申告できる所得控除」がある場合は、確定申告をすることで、「支払った税金を取り戻せる(還付される)」というメリットがあります。
会社員の確定申告は基本的に義務ではありません。
そのため、確定申告をすることで税金の還付が受けられる場合に、自分自身で控除を申告することになります。
所得税と住民税の計算方法
所得税は「課税される所得金額(課税所得金額)」に対して、累進課税方式で課税されます。
確定申告をして何らかの所得控除を申告した場合、課税所得金額を減らせるため、その結果税金も少なくできるという流れです。
所得控除にはさまざまな種類があり、個人それぞれの事情に合わせて申告できる控除が変わります。
また、住民税は、「所得割」と「均等割」に分かれており、所得割は市民税と県民税の合計で「課税所得金額の10%」と決められています。
そのため、確定申告をして課税所得金額が減ると、住民税も減らせます。
所得税額は、以下の速算表によって簡単に計算できます。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000円~1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円~3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円まで
|
20% |
427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円まで |
23% |
636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
(国税庁のHPより。令和19年から令和25年までの確定申告では、所得税と復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付する必要があります。)
医療費控除を確定申告した場合のシミュレーション
ここで、課税所得金額500万円の人が、5万円の医療費控除を申告した場合について計算してみましょう。
医療費控除を申告しないと仮定した場合、課税所得金額500万円の人の所得税・住民税の所得割の計算は以下のとおりです。
課税所得金額 |
500万円×20%(所得税率)-42万7,500円(控除額)=57万2,500円 |
住民税の所得割 |
500万円×10%(住民税率)=50万円 |
税金の合計 |
107万2,500円 |
一方、医療費控除として5万円を申告し、課税所得金額が495万円になった場合、所得税・住民税は以下のように変わります。
所得税 |
495万円×20%-42万7,500円(控除額)=56万2,500円 |
住民税の所得割 |
495万円×10%=49万5,000円 |
税金の合計 |
105万7,500円 |
このように、所得控除を申告することで、結果的に所得税と住民税(所得割)の負担を軽減できます。
次に、課税所得金額を減らせる効果がある「所得控除」の種類について、詳しく見ていきましょう。
確定申告と年末調整で申告できる所得控除の種類
所得控除の種類は、大まかに分けて
- 会社が年末調整で行ってくれるもの
- 自分で確定申告して申請するもの
の2種類に分けられます。
会社の年末調整で完結する所得控除の種類
会社の年末調整で完結できる控除は以下となっており、必要な書類等を提出すれば会社が手続きを行ってくれます。
すべての人に適用される控除 |
|
基礎控除 |
すべての人が対象(48万円) |
勤務先が年末調整で処理する控除 |
|
社会保険料控除 |
納税者本人や同一生計の親族の社会保険料の支払い分 |
配偶者控除 |
生計同一の、年収48万円以下の配偶者がいる場合 |
扶養控除 |
生計同一の、16歳以上の子供や両親などがいる場合 |
障害者控除 |
納税者本人や生計同一の妻、親族が障害者の場合 |
寡婦(寡夫)控除 |
配偶者と死別・離婚し、再婚していない人(合計所得金額500万円以下)の場合 |
勤労学生控除 |
勤労学生で、合計所得金額75万円以下の場合 |
配偶者特別控除 |
所得が48万円超133万円以下の配偶者がいる場合 |
小規模企業共済等掛金控除 |
確定拠出年金や小規模共済の掛金を支払っている場合 |
生命保険料控除 |
生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料を支払っている場合 |
地震保険料控除 |
地震保険料を支払っている場合 |
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) |
一定の条件を満たした住宅を購入した場合(2年目以降) |
確定申告をして申告する所得控除の種類
一方、自分で確定申告をすることで申告できる所得控除は、以下のとおりです。
医療費控除 |
家族全員分の年間医療費が10万円を超えた場合(年収200万円未満の人は、所得の5%を超えた場合) |
セルフメディケーション税制による控除 |
一定の条件を満たす家族全員分の薬代が年間12,000円を超えた場合 |
雑損控除 |
自然災害や盗難等で資産に損害が生じた場合 |
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) |
住宅ローンを組んで1年目の場合 |
寄付金控除 |
ふるさと納税で寄付をした場合 |
また、年の途中で退職して再就職していない場合は、会社による年末調整を受けられません。
自分で確定申告をして所得税額を確定させることで、退職前に源泉徴収されていた税金を取り戻せる場合があります。
加えて、年末調整後に出産や結婚、祖父母の面倒を見始めた場合なども、確定申告をすると税金の還付を受けられる可能性があります。
条件に当てはまる場合は、忘れずに確定申告をしましょう。
会社員が確定申告をしなければならない場合とは
一般的な会社員の場合、確定申告は任意であり、確定申告をするかどうかは個人で決めらます。
しかし、以下のような人は会社員であっても確定申告が義務になるため、注意が必要です。
- 給与収入が2,000万円を超える人
- 給与所得を2か所以上からもらっている人
- 副業収入が20万円を超える人
- 一時所得(生命保険の満期金など)があった人
また、住宅ローン減税を受けたい場合は、住宅ローンを組んで1年目のみ、自分で確定申告をする必要があります。
2年目以降は年末調整で処理できますので、1年目は忘れずに自分で確定申告しましょう。
会社員が確定申告すべきメリット5選
会社員は、基本的には確定申告は不要です。
しかし、以下のような場合は「支払った税金を取り戻せる」というメリットがあります。
- ふるさと納税をした場合
- 1年間の医療費が10万円を超えた場合
- 家族全員分の薬代が年間で1万2,000円を超えた場合
- 副業収入が20万円以下の場合
- 株式投資・投資信託投資で損失が出た場合
ここでは、確定申告でメリットがある場合について、詳しく解説します。
ふるさと納税の確定申告で還付金を受け取れる
ふるさと納税とは、自分が住んでいる自治体以外に寄付ができる制度です。
メリットは以下の3点です。
- 自分の意志で、納税したい自治体を選べる
- 寄付額に応じたお礼品を受け取れる
- 寄付額に応じて所得税や住民税の控除を受けられる
ふるさと納税では、自己負担金2,000円を差し引いた金額を「寄付金控除」として確定申告をすることで、所得税や住民税の控除を受けられます。
ふるさと納税の控除の仕組みは、以下のとおりです。
- ふるさと納税額から2,000円(自己負担分)を差し引いた金額を、「課税所得金額から」控除できる
- ふるさと納税額から2,000円を差し引いた金額の10%を、「住民税額から」直接控除できる(税額控除)。
- ふるさと納税額から2,000円を差し引いた金額の(100%-10%-所得税率(%))を、住民税額から直接控除できる(住民税特例分)
このように、ふるさと納税における控除額は、1~3の合計額になります。
ただし、ふるさと納税は寄付の上限が設定されており、設定金額内で寄付をする必要があります。
ふるさと納税を行う期限は?
ふるさと納税では、申告をする年の前年1月1日から12月31日までに寄付を終わらせておく必要があります。
例えば、2025年2月~3月に確定申告できるのは、「2024年1月1日~12月31日」までに寄付した分です。
2024年に寄付しそびれてしまったという人は、2026年に確定申告ができるように、2025年中に寄付を終わらせておくようにしましょう。
ワンストップ特例制度の条件
ふるさと納税では特例が設けられており、確定申告なしでふるさと納税を申告できる「ワンストップ特例制度」があります。
ワンストップ特例制度の利用条件は、以下のとおりです。
- 1年間の寄付先が5自治体以内である(同じ自治体に複数寄付した場合、1自治体として数える)
- もともと確定申告をする必要がない人
もしも同じ年度内に医療費控除などで確定申告をする場合は、ワンストップ特例は適用されず、確定申告の際に寄付金控除も併せて申告する必要があります。
また、ワンストップ特例制度を使う場合は、寄付をした際に「特例の申請書」をふるさと納税先の自治体に提出する必要があります。
ふるさと納税時に申請書の提出を忘れた場合などは、自分で確定申告をするようにしましょう。
ふるさと納税については、以下の記事も参考にしてください。
家族の年間医療費が10万円を超えた場合還付金を受け取れる
医療費控除とは、「家族全員が年間に支払った医療費」が10万円を超えた場合(1年間の総所得金額が200万円以下の人は、所得の5%を超えた場合)、申告できる控除です。
病院での治療代や市販薬代、通院の交通費など、治療のための費用はすべて申告できます。(最高で200万円まで)
医療費控除の対象となる金額は、以下のとおりです。
- 実際に支払った医療費の合計額-(入院給付金など、保険金で補填された金額)―(10万円)
例えば、1年間に支払った医療費の総額が12万円だった場合は、10万円を引いた残りの「2万円」を医療費控除として申告できます。また、入院等で保険金を受け取った場合は、その金額も差し引いて計算します。
保険給付金等を受け取った場合の計算式
例えば、1年間で実際に支払った医療費の合計が50万円で、保険給付金として15万円受け取った場合は、以下のように計算します。
- 50万円-15万円-10万円=25万円
このように、25万円を医療費控除として申告できます。
家族の年間薬代が1万2,000円を超えた場合(セルフメディケーション税制)還付金を受け取れる
家族全員分の年間の薬代(スイッチOTC医薬品のみ)が1万2,000円を超えた場合は、「セルフメディケーション税制の特例」を申告することで、税金の還付を受けられます。
スイッチOTC医薬品とは、医師から処方される医薬品のうち、副作用が少なく安全性が高いものを市販薬に転用したものをいいます。
例えば、スイッチOTC医薬品の合計購入費用が3万円だった場合、「3万円-1万2,000円=1万8,000円」となり、1万8,000円を控除として申告できます。
セルフメディケーション税制の条件は、以下のとおりです。
- 1年間の家族全員分の薬代が12,000円以上(上限88,000円まで)
- セルフメディケーション税制の対象商品のみ(OTCスイッチ医薬品)
- 申告者が、健康保持増進および疾病の予防への「一定の取組」を行っていること
「一定の取組」としては、以下のような取組が該当します。
- 保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
- 予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)
- 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
- 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
これらの取組は、家族全員が行う必要はありません。確定申告者を行う人が取り組んでいれば、条件はクリアできます。
ただし、この「セルフメディケーション税制」と、通常の「医療費控除」は併用できません。
還付金がより多いほうを選んで申告するようにしましょう。
スイッチOTC医薬品の商品名については、厚生労働省の「対象品目一覧」も参考にしてください。
副業が20万円以下でも確定申告で還付金を受け取れる場合がある
会社員で副業をしている場合、副業の所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。
ただし、以下のような場合は、確定申告でメリットを得られる場合があります。
- 原稿執筆など、副業が源泉徴収の対象となっている場合
- 副業で青色申告をしており、赤字の場合
- 副業で白色申告をしており、赤字の場合
例えば、源泉徴収対象の副業をしていて赤字の場合、確定申告をすることで源泉徴収された税金を取り戻すことができます。
また、確定申告をすると、副業の赤字と給与所得を相殺してその年の課税所得金額を減らすことができるため、節税が可能です。
また、青色申告をしている場合は、赤字を翌年度以降、3年間にわたって繰り越すこともできます。
さらに、前年度も青色申告していた場合、今年度の赤字と前年度の黒字とを相殺(赤字の繰戻し)をし、すでに納めた税金の還付を受けることも可能です。
白色申告の場合は、次年度以降への赤字の繰り越しはできませんが、赤字が出た年の他の所得と損益通算できます。
株式や投資信託の損失を損益通算・繰越控除できる
株式や投資信託の売買で売却損が出た場合、確定申告をすることで「株式や他の投資信託の売却益」と損益通算できます。
売却損と損益通算できる利益は、以下のとおりです。
- 株式や他の投資信託の売却益
- 配当所得や分配金(公社債投資信託の分配金は対象外)
確定申告をする場合は、異なる証券会社の口座間であっても損益通算が可能です。
また、損益通算しても売却損が残った場合、確定申告をすることによって、損失を最長3年間繰り越すことができます。
このように、株式投資や投資信託の損失を損益通算したい場合や、損失を次年度以降に繰り越したい場合は、必ず確定申告をするようにしましょう。
ただし、NISA口座内での取引は非課税のため、損失が出ても損益通算や繰越控除の対象外となります。また、FXや先物取引との利益も損益通算できないこととなっています。
「特定口座(源泉徴収あり)」内の取引であれば、自動的に口座内で損益通算されるため、確定申告は不要であることも覚えておきましょう。
年度途中の退職で税金の還付を受けられる場合がある
一般的な給与所得者は、毎月の給与から所得税や復興特別所得税が源泉徴収されています。
しかし、この源泉徴収額はあくまで概算であり、実際の税額と必ずしも一致するわけではありません。
そこで、会社は年末調整を行い、年間の課税所得金額を確定させて税金の過不足を精算し、税金を多く納めすぎていた場合は還付されます。
しかし、年の途中で退職し、再就職せずに年末を迎えた人は年末調整を受けられないため、所得税や復興特別所得税を納めすぎている場合があります。
年度途中で退職して年末調整をしていない場合は、税金が還付される可能性があるため、忘れずに確定申告するようにしましょう。
個人事業主やフリーランスが赤字で確定申告をするメリット5選
個人事業主やフリーランスは、基本的に確定申告が必要ですが、赤字の場合は申告の義務はありません。
しかし、赤字で確定申告をすると次につながるメリットが多いため、確定申告をしておくことをおすすめします。
それでは、赤字でも確定申告をすべきメリットについて詳しく解説します。
青色申告では赤字の繰越や繰戻しができる
赤字の繰越とは、発生した赤字を翌年以降3年間にわたって、利益から差し引けることをいいます。
1年間の利益と損失を通算した結果、最終的に残ってしまった赤字のことを「純損失」といいます。
以下の条件を満たすと、純損失を翌年以降3年間、利益から差し引くことが可能です。
- 純損失の生じた年に青色申告書を提出していること
- 次年度以降も、確定申告書を提出していること
例えば、今年度の最終的な純損失が100万円だった場合、来年度の利益から100万円まで相殺できます。相殺しきれなかった場合、翌々年の利益からも相殺が可能です。
このように、青色申告をしていると赤字を繰り越せるため、結果的に節税できます。
なお、赤字の翌年が白色申告の場合でも、純損失が出た年に青色申告していれば、赤字の繰り越しが可能です。
また、「赤字の繰戻し」といい、赤字を前年度の利益と相殺し、税金を還付してもらうこともできます。この場合は、前年度も青色申告していることが必要です。
源泉徴収額の還付を受けられる可能性がある
受け取った報酬から源泉徴収されている場合、確定申告して赤字を申告することで、すでに支払った源泉徴収額を取り戻せる(還付を受けられる)可能性が高くなります。
源泉徴収の対象となる仕事には、原稿料やデザイン料、講演料、弁護士・税理士・司法書士の報酬などがあります。
赤字の場合は、確定申告書に源泉徴収額を明記することで還付を受けられますので、正確に記入するようにしましょう。
他の所得と損益通算ができる場合がある
「他の所得との損益通算」とは、対象となる所得区分で損失が出た場合に、他のカテゴリーの利益と相殺できることを言います。
損益通算でよくあるケースは「事業所得が赤字になった場合」です。
事業所得が赤字になった場合は給与所得など、他の所得と損益通算できます。
例えば、副業をしている会社員で、課税所得金額が300万円、事業所得が30万円の赤字の場合、損益通算して「課税所得金額を270万円」とすることが可能です。
このように、損益通算を行うことで課税所得金額を減らし、最終的に納める税金の額を少なくできる場合があります。
所得を証明できる
個人事業主で赤字の場合、確定申告の義務はありません。
しかし、収受印を押してもらった確定申告書の控えを「所得の証明書」として利用できるため、赤字でも確定申告するメリットがあります。
収受印がある確定申告書類は、所得を証明する書類として、住宅ローンや事業用融資の審査、クレジットカードの発行などで必要となります。
特に、個人事業主が住宅ローンを組む場合は、過去3年分の所得証明書を提出するため、赤字であっても確定申告が必要です。
赤字であることは審査上マイナス要素ではありますが、提出書類がないと、そもそも審査を受けられません。
何らかの審査を受ける可能性がある人は、所得を客観的に証明できるよう、赤字でも確定申告をするようにしましょう。
国民健康保険料などが安くなる場合がある
個人事業主やフリーランスで国民健康保険に加入している人は、赤字の場合、国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性があります。
国民健康保険料は、加入者全員が負担する「均等割」と、所得に応じて計算される「所得割」があります。
均等割は、所得金額が基準以下であれば減額してもらえるため、納める保険料を少なくできます。
ただし、減免を受けるためには、所得証明が必要です。所得が少ないことや赤字であることを証明するためにも、確定申告をしておくようにしましょう。
e-Taxで簡単に確定申告を行う方法
確定申告の方法としては、確定申告書の持参や送付のほかに「e-Taxで電子申告データを提出する」という方法があります。
ここでは、e-Taxを利用する確定申告方法について、詳しく解説します。
e-Taxとは?
e-Taxとは、国税電子申告・納税システムといい、所得税や消費税、贈与税、印紙税、酒税などの申告を、インターネットを通じて行えるサービスです。
インターネットを利用するため、確定申告会場に書類を持参したり、送付したりする手間が省けます。
また、メンテナンス時間を除き、休日を含む24時間利用可能なため、自分の好きな時間にオンラインで申告できます。
このように、e-Taxは手間がかかりがちな確定申告を、より簡単に行うための便利なシステムとなっています。
e-Taxを利用するメリット
e-Taxでは、確定申告の手続きを自宅で完結できるだけでなく、さまざまなメリットがありますので詳しく紹介します。
確定申告書の添付書類を省略できる
確定申告の書類を実際に提出する場合は、生命保険の控除証明書や医療費のレシートなどの実物を添付する必要があります。
しかし、e-Taxで電子申告すると、これらの添付書類を省略できるため、より簡単に確定申告できます。
省略できる添付書類は、以下のとおりです。
- 給与所得者の源泉徴収票
- 年金受給者の源泉徴収票
- 社会保険料控除の証明書
- 生命保険料控除の証明書
- 地震保険料控除の証明書
- 住宅ローン控除の借入金年末残高証明書(2年目以降)
- 医療費控除の証明書
- 寄付金控除の証明書
- 特定口座年間取引証明書
- 雑損控除の証明書
これらの書類の提出を省略できますが、税務署から提示や提出を求められた際は対応する必要があります。
失くさないようにきちんと保管しておくようにしましょう。
青色申告者は控除額が10万円増える
青色申告とは、日々の取引を複式簿記に記帳し、その記帳に基づいて正しい確定申告をする方法です。
「複式簿記で記帳する」「貸借対照表と損益計算書を提出する」なと、すべての条件を満たすと55万円の「青色申告特別控除」が受けられます。
ここで、書面の持参や提出ではなくe-Taxで電子申告を行う場合、控除額が10万円上乗せされ、合計で65万円の青色申告特別控除を受けられるようになります。
このように、e-Taxを利用して確定申告をすると、青色申告事業者は節税できるため積極的に活用すると良いでしょう。
還付のスピードが速い
e-Taxで確定申告をすると、書類提出の場合と比較して、税金の還付スピードが早いというメリットがあります。
書面での提出では、税金の還付は1~1か月半ほどかかるとされています。
一方、e-Taxで申告すると約3週間程度で還付されます。
確定申告による税金の還付を早く受け取りたいという人は、早い時期にe-Taxで確定申告をするようにしましょう。
e-Taxを利用するデメリット
e-Taxを利用した確定申告はメリットが多いものの、準備から申告まで一定の手間がかかったり、インターネットを通じた申告そのものが難しく感じたりするというデメリットもあります。
特に、マイナンバーカードを新たに取得する場合、申請から発行まで3週間~1か月ほどかかるため早めの準備が必要です。
また、パソコンやスマートフォンの操作が不慣れな場合は、e-Taxでは申告しにくいと感じる場合もあります。
どちらの方法が自分に合っているかを考えたうえで、確定申告方法を選ぶようにしましょう。
e-Taxで確定申告をする手順
e-Taxの事前準備は、以下のとおりです。
- マイナンバーカードを取得する(通知カードではなくIDチップが入っている正式なもの)
- マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン(なければ、ICカードリーダライタ)
スマートフォンでマイナンバーカードを読み取れない場合や、パソコンで電子申告したい場合は、マイナンバーカードを読み込むための「ICカードリーダライタ」を用意しましょう。
e-Taxを利用した確定申告は、e-TaxのHPから手続きを行います。
手順は以下のとおりです。
- 利用者識別番号を取得する
- 電子証明書を取得する
- e-Tax上で、手続きを行うソフトやコーナーを選ぶ
- 申告・申請データを作成し、送信する
- 送信結果を確認する
e-TaxのHPでは、画面上に次の指示が表示されますので、それに従って進めていくことでスムーズに確定申告できます。
まとめ 確定申告を活用して節税しよう!
会社員の確定申告は任意ですが、医療費控除やふるさと納税の申告で節税できます。
また、副業をしている会社員は、赤字であっても確定申告することで、給与所得と相殺でき節税につなげられる場合もあります。
個人事業主やフリーランスは、必要経費を計上することで節税したり、赤字を翌年度以降に繰り越したりすることが可能です。
e-Taxを使えば、手軽に24時間オンライン申請ができますので、税金の還付などの節税につながる場合は、積極的に確定申告を行うようにしましょう。
伊藤久実
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。