【保険の種類と特徴を徹底解説】目的別の選び方や注意点も紹介
保険にはさまざまな種類がありますが、それぞれの保険の特徴や違いがよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
人生にはさまざまなリスクがありますが、結婚や出産、老後などのライフステージによって必要な保険は異なるため、保険の種類や特徴をよく理解し、自分に合った保険を選ぶことが大切です。
この記事では、保険の基本的な種類や特徴、目的別の保険の選び方や注意点をくわしく解説します。保険選びで迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
・目次
日本の保険は公的保険と民間保険の2つの種類
日本の保険は、大きく分けると「公的保険」と「民間保険」の2つの種類があります。公的保険はすべての国民に加入義務がある一方、民間保険は自由に加入できることが特徴です。
日本では、公的保険と民間保険をうまく活用することで、安心して日々の生活を送ることができます。
それでは、それぞれの保険について詳しく見ていきましょう。
公的保険とは
公的保険とは、国民が人生のさまざまなリスクに対応できるように作られた保険で、国や地方自治体などの公的な機関が運営しています。
公的保険は、一定の条件を満たす人は加入が義務付けられています。
代表的な公的保険としては「健康保険」や「介護保険」、「年金保険」が挙げられます。
これらの中で、健康保険(公的医療保険)は「国民皆保険」とも呼ばれており、医療費の一部を自己負担するだけで、すべての国民が質の高い医療を受けられるという特徴があります。
民間保険とは
民間保険とは、民間の企業が販売・運営している保険のことをいいます。
民間保険の種類としては、生命保険や損害保険があり、個人それぞれの生活スタイルやニーズ・目的に応じて自由に選ぶことが可能です。
日本では公的保険が充実しているため、民間保険は公的保険の足りない部分や、より充実させたい部分を補うという役割を担っています。
民間保険には数多くの種類があるため、細かな目的に合わせた保険を選ぶことが可能です。
【民間保険は2種類】生命保険と損害保険の特徴
民間の保険は「生命保険」と「損害保険」に分けられます。それぞれの特徴を詳しく解説します。
生命保険の特徴と主な種類
生命保険は、被保険者の死亡や病気・ケガなどに備えるものや、資産形成を目的とするものがあります。
生命保険の主な種類は、以下のとおりです。
生命保険の種類 |
特徴 |
終身保険 |
一生涯の死亡保障があり、解約返戻金を受け取れる貯蓄型保険 |
定期保険 |
一定期間の死亡に備えられる掛け捨て型の保険 |
医療保険 |
病気やケガで入院・手術をした際に給付金を受け取れる保険 |
がん保険 |
がんと診断された場合や治療費用をカバーするためのがん専用医療保険 |
就業不能保険 |
病気やケガで長期間働けなくなった際の生活費を補える保険 |
介護保険 |
介護状態になった際の費用負担に備える保険 |
学資保険 |
子供の教育費を計画的に準備するための保険 |
個人年金保険 |
老後の生活資金を計画的に準備するための保険 |
公益財団法人生命保険文化センターの「2022年度 生活保障の調査」によると、日本における生命保険の加入率は以下のようになっています。
調査対象 |
加入率 |
全体 |
79.8% |
男性 |
77.6% |
女性 |
81.5% |
生命保険に加入するかどうかは個人それぞれの経済状況やライフスタイル、考え方によって異なります。
個人の状況やニーズに合わせて、適切な保険の種類を選ぶことが大切です。
損害保険の特徴と主な種類
損害保険は、災害や事故によって生じる損害に備えるための保険で、以下のような種類があります。
損害保険の種類 |
特徴 |
火災保険 |
火災や風水害・落雷などによる建物・家財の損害に備える |
地震保険 |
地震・津波・噴火による建物や家財の損害に備える(火災保険とセットで加入する必要あり) |
自動車保険 |
自動車事故による損害賠償責任やケガ・修理費に備える |
バイク保険 |
バイク事故による損害賠償責任やケガ・修理費に備える |
自転車保険 |
自転車事故による損害賠償責任やケガに備える |
傷害保険 |
日常生活や仕事中の突発的な事故によるケガに備える |
日本では、ほとんどの人が自動車保険に加入しています。
また、住宅ローンを利用する際に火災保険の加入義を務付けられることが多いため、火災保険の加入率も高くなっています。
生命保険の3つの目的とは
生命保険を選ぶ際は、まず「どのような目的で保険に入るのか」を明確化し、それに合った保険を選ぶことが大切です。
生命保険の加入目的は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- 死亡リスクに備える
- 病気やケガのリスクに備える
- 将来の教育資金や老後資金の不足に備える
保険の加入や見直しを検討する際は、「どのような保障を希望するか」「どのようなリスクに備えたいか」をきちんと考えることが大切です。
それでは、それぞれの目的に適した保険の種類と特徴について、詳しく解説します。
死亡リスクに備える保険の種類と特徴
死亡リスクに備える保険は、以下のような目的で利用されます。
- お葬式やお墓などの高額な出費に備える
- 残された家族の生活費を補う
- 子供の教育費を確保する
- 相続税の支払いに備える
死亡リスクに備える保険は、死亡保険金を葬儀費用や遺族の生活費の補填に使うことで、遺族の経済的な負担を減らし、安心して生活できる基盤を整えるという役割があります。
加えて、被保険者に子供がいる場合は、死亡保険金が大学や専門学校などの学費を確保するための資金源となります。
また、被保険者の死亡によって遺族が不動産などの現金化しにくい資産を相続する場合は、相続税支払いのための現金を用意する手段として、保険が大きな役割を果たします。
このように、死亡リスクに備える保険は、さまざまな目的のための利用できます。
死亡リスクに備える保険の種類は大きく分けて6つあります。それぞれくわしくみていきましょう。
終身保険
終身保険とは、死亡保障を生涯にわたって備えられる保険です。
終身保険では、被保険者が死亡した場合(もしくは高度障害状態になった場合)に、保険の加入時に定めた死亡保険金または高度障害保険金が支払われます。
終身保険のメリット
終身保険のメリットは、以下の3点です。
- 保障期間が一生涯のため、家族への備えとして安心感がある
- 解約した場合には、解約返戻金を受け取れる
- 死亡保険金は相続税の非課税枠が適用されるため、相続税を節税できる
終身保険は、被保険者がいつ亡くなっても遺族に保険金が支払われることが大きなメリットです。
また、契約者が保険を解約すると解約返戻金を受け取れるため、そのお金を自分の生活や老後のための資金として活用できます。
相続時には相続人1人あたり500万円の非課税枠があるため、死亡保険金として資産を残すことで課税される相続財産を減らし、相続税を低く抑えられるというメリットもあります。
終身保険のデメリット
終身保険のデメリットは以下のとおりです。
- 定期保険(保障期間が決まっている保険)に比べて保険料が高くなる傾向がある
- 契約から短期間の間に解約した場合、元本割れする可能性がある
終身保険は、一定期間のみ保障される掛け捨ての定期保険に比べて、保険料が高くなる傾向があります。
保障期間ではなく保険料の安さを重視したい場合は、定期保険もひとつの選択肢といえます。
また、終身保険を契約から短期間の間に解約した場合は、払込保険料の総額よりも解約返戻金が少なくなり、元本割れする可能性があります。
早期の解約は損失が出る場合が高いため、長期にわたって継続する前提で終身保険に加入するようにしましょう。
外貨建て終身保険
外貨建て終身保険とは、「死亡保険金は30,000ドル」「毎月の保険料は120ドル」というように、保険料や保険金、解約返戻金が外貨建ての終身保険のことをいいます。
日本で多く販売されている外貨建て保険は、主に米ドル建てのものが多くなっています。
外貨建て終身保険のメリット
外貨建て終身保険のメリットは、以下のとおりです。
- 金利が高い外貨で運用するため、資産運用効果が期待できる
- 円の価値が下がった場合でも資産価値が保たれる
- 円以外の相続財産を残せる
外貨建て終身保険は高い金利で運用できるため、円建ての終身保険よりも効率的に積み立てているお金を増やせるというメリットがあります。
また、円安になって円の価値が下がった場合でも、保険金や解約返戻金はドル建てなので、将来受け取る死亡保険金や解約返戻金の資産価値が保たれます。
外貨建て終身保険を活用することで、円の価値が下がるリスクにも備えられます。将来円安が進むと考えている場合は、外貨建て終身保険も選択肢のひとつとして検討すると良いでしょう。
外貨建て終身保険のデメリット
外貨建て終身保険のデメリットは、以下の3点です。
- 為替リスクがある
- 円安が進むと保険料が高額になる
- 途中解約で損失が出るリスクがある
外貨建て終身保険は、円安・円高といった為替変動によって、以下のように保険料や保険金が増えたり減ったりします。
|
円安になる |
円高になる |
円換算の保険料 |
高くなる |
安くなる |
保険金 |
多くなる |
少なくなる |
解約返戻金 |
多くなる |
少なくなる |
特に、円安になると円換算の保険料が上がり、継続して保険料を支払えなくなる場合があるため注意が必要です。
外貨建て終身保険では、ある程度円安が進んでも、無理なく保険料を支払えるようなプランを検討しましょう。
一時払い終身保険
一時払い終身保険とは、契約時に保険料を一括で支払うことで、一生涯にわたる死亡保障を得られる保険です。
一般的な終身保険では、毎月もしくは毎年など定期的に保険料を支払います。それに対して、一時払い終身保険では、保険料全額を契約時にまとめて支払います。
このように、保険料の支払い負担が契約時に完了することが特徴です。
一時払い終身保険のメリット
一時払い終身保険のメリットは、以下のとおりです。
- 長期的に保険料を支払う必要がないため、金銭的な負担を軽減できる
- 一生涯の死亡保障を得られる
- 契約後の経過年数に応じて解約返戻金が増えるケースが多い
一時払い終身保険は保険料を一括で支払うため、継続した費用負担が発生しません。
また、解約返戻金が通常の終身保険よりも早く増える傾向があるため、保障を得ながら効率的に資産を増やせるというメリットがあります。
一時払い終身保険のデメリット
一方、一時払い終身保険のデメリットは以下のとおりです。
- 最初にまとまった資金が必要である
- 早期解約すると損失が出る場合がある
一時払い終身保険は、200万円以上の資金が必要になるケースが多いため、ある程度まとまった資金が必要です。
また、早期解約すると、解約返戻金が保険料を下回り、損失が出るリスクがあるため注意が必要です。
一時払い終身保険は、手元にまとまった資金がある人、毎月の保険料支払いの負担を避けたい人、将来の相続対策を確実に行いたい人に適していると言えます。
一時払い終身保険には、円建てのものと外貨建てのものがありますが、外貨建ての一時払い終身保険は高い金利で運用できるため、特に人気があります。
早期解約にはリスクがあるため、長期的なライフプランや資金状況を考慮したうえで加入するようにしましょう。
変額保険
変額保険とは、「死亡保障」と「資産形成」という2つの要素を組み合わせた保険で、以下のような特徴があります。
- 被保険者が万が一死亡した際は、遺族が死亡保険金を受け取れる
- 解約返戻金や満期保険金は、運用成果によって増減する
- 保険期間中の死亡保障には最低保証があるため、運用成績に関わらず一定額を受け取れる
変額保険では、保険料の一部を投資信託など、契約者が選んだ投資商品で運用する仕組みです。
運用成果に応じて満期保険金や解約返戻金の金額が増減するため、運用成果が良い場合は、解約返戻金が大きく増える可能性があります。
逆に、運用成果が悪い場合は保険料払込総額よりも解約返戻金の額が下回り、損失が出る場合があるため注意が必要です。
変額保険のメリット
変額保険の主なメリットは以下のとおりです。
- 死亡保障を得ながら、将来に向けた積極的な資産形成ができる
- 将来のインフレ対策ができる
- 運用先は柔軟に変更できる保険商品が多い
変額保険では、株式投資信託など積極的な運用方法を選べます。その結果、解約返戻金を大きく増やせる可能性があり、将来のインフレにも備えた運用ができます。
また、手数料無料で運用先を変更できる保険商品も多く、柔軟に資産運用方法を変えられることも変額保険のメリットと言えます。
変額保険のデメリット
一方、変額保険のデメリットとしては以下の3点があります。
- 元本割れリスクがある
- 運用リスクは契約者が負う
- 早期解約すると損失が出る可能性が高い
変額保険で比較的リスクが高い運用方法を選んだ場合、運用次第では元本割れのリスクがあります。また、運用方法は契約者が自分で選ぶため、運用リスクは契約者が負う仕組みです。
また、他の保険と同様に、早期解約すると損失が出る可能性が高くなります。
変額保険は、保障を得つつ資産形成をする保険商品です。できるだけ途中解約せず長期にわたって継続するようにしましょう。
定期保険
定期保険とは、一定期間のみ死亡保障がある掛け捨ての保険です。
「契約時から10年間」や「60歳まで」など、契約時に決めた期間に被保険者が亡くなった場合に、死亡保険金が支払われます。
保障期間が限られていること、掛け捨てであることから、終身保険に比べて保険料が比較的安価なことが特徴です。
保障期間を超えて被保険者が生存している場合は、保険金の支払いはなく契約が終了する仕組みとなっています。
定期保険のメリット
定期保険のメリットとしては、以下の3点です。
- 保障期間を柔軟に設定できる
- 保険料が安い
定期保険は、「子供が社会人になるまでの期間」「定年になるまでの期間」など、ライフプランに合わせて自由に保障期間を決められることがメリットです。
また、掛け捨てタイプのため、安い保険料で死亡保障を備えられることも大きなメリットといえます。
定期保険のデメリット
一方、定期保険のデメリットとしては以下の3点が挙げられます。
- 一生涯の保障を得られない
- 更新型の場合は、更新時に保険料が大幅に上がる可能性がある
- 貯蓄性がない
定期保険は保障期間が決まっており、最長で80歳までと設定されている場合が多くなっています。80歳以降の死亡保障を備えたい場合は、一生涯の保障を得られる終身保険を検討しましょう。
また、保険料は比較的安価ですが、貯蓄性がないため、終身保険のように資産形成には向いていません。死亡保障を備えつつお金を貯めたい場合は、終身保険を検討するようにしましょう。
収入保障保険
収入保障保険とは、被保険者が死亡もしくは所定の高度障害状態になった際に、死亡保険金を年金形式で受け取れる保険です。
収入保障保険は、被保険者が亡くなった際に、残された家族が安心して生活できるように、生活費を補填する目的があります。
そのため、保障期間は「子供が社会人になるまで」「年金をもらう時期まで」というかたちで設定する人が多くなっています。
収入補償保険における保険金は、基本的には年金形式で毎月支給されます。ただし、保険商品によっては、受け取り総額は減るものの一括受け取りができるケースもあります。
収入保障保険のメリット
収入保障保険の主なメリットは、以下のとおりです。
- 年金形式で継続的に保険金を受け取れる
- 契約期間が経過するにつれて総支払額が少なくなるため、保険料が比較的安い
- 保障期間や保険金額を自由に設定できる
- 病気やケガで就業不能になった際に保険金を受け取れる商品もある
収入保障保険は保険金を年金形式で受け取れるため、家計の収支バランスを保ちやすいというメリットがあります。
また、「保障期間は65歳までで、保険金は毎月15万円受け取る」というように、保障期間や保険金額を自由に設定できます。
加えて、収入保障保険は終身保険や定期保険よりも保険料が割安になる傾向があることから、保険料を抑えつつ長期間にわたる保障を得たいという子育て世帯に人気があります。
収入保障保険のデメリット
一方、収入保障保険のデメリットとしては以下が挙げられます。
- 掛け捨てである
- 保障額が時間の経過とともに減少する
収入保障保険は掛け捨てで解約返戻金はないケースが多いため、資産形成には不向きです。
また、時間の経過とともに保障額が減少するため、長期間にわたって一定額の保障を確保したい場合は、定期保険や終身保険を検討しましょう。
病気やケガに備える保険の種類
病気やケガに備える保険としては「医療保険」や「がん保険」、「就業不能保険」や「介護保険」があります。
これらの保険は、公的医療保険制度でまかなえない部分をカバーする役割があります。また、より手厚い保障が欲しいという場合にも役立ちます。
それでは、4種類の保険について、詳しく解説していきます。
医療保険
医療保険とは、病気やケガで入院や手術が必要になった際の費用を補うための、任意加入の保険です。
日本の公的医療保険ではカバーしきれない負担分を補填するために、多くの人が医療保険に加入しています。
主な医療保険では、入院1日ごとに「入院給付金」を受け取れます。また、医療保険のプランによっては手術給付金や通院給付金を受け取れる場合もあります。
医療保険に加入しておくことで、病気やケガで入院した際の出費負担を軽減できます。
1日あたりの入院給付金額は加入する際に自分で決められるため、予算に合わせたプランを作成できます。
医療保険のメリット
医療保険のメリットは、以下のとおりです。
- 病気やケガで入院した際に保険金を受け取れる
- 先進医療のような保険適用外の治療に備えられる
- 入院中の自己負担分(食事代や差額ベッド代)をカバーできる
病気やケガで入院した場合、3食の食事代(一般的な食事代は1日3食で1,380円)や差額ベッド代は全額自己負担です。また、公的医療保険制度が適用されるものの、一定の医療費もかかるため、まとまった費用負担が発生します。
このように、入院や手術・退院後の治療には一定の費用がかかりますが、医療保険に加入することで、給付金でそれらの費用を補填できます。
先進医療特約を付加すると、保険適用外の先進医療費も一定額まで保険金でまかなえるというメリットもあります。
また、近年は入院が短期化しているものの、脳疾患や大けがなどで入院が長引くケースもあり、費用負担が重くなる場合もあります。
厚生労働省が発表している「令和2年(2020年)患者調査の概況」によると、主な疾病別平均在院日数は以下のとおりです。
傷病分類 |
平均在院日数(平均) |
悪性新生物(腫瘍) |
19.6日 |
内分泌・栄養および代謝疾患 |
24.9日 |
精神および行動の障害 |
294.2日 |
循環器系の疾患 |
41.5日 |
呼吸器系の疾患 |
34.5日 |
消化器系の疾患 |
13.2日 |
入院が長くなればなるほど費用負担が重くなりますが、医療保険に加入することで経済的な負担を減らせます。その結果、精神的な安定が生まれ、治療に専念しやすくなることも医療保険のメリットといえます。
医療保険のデメリット
医療保険のデメリットは、以下のとおりです。
- 更新型の医療保険は、将来の保険料が高くなることがある
- 特約を付加しすぎると保険料が高くなる
- 健康で過ごせた場合、保険料が無駄になると感じる場合がある
- 多くの医療保険は掛け捨て型でお金が貯まらない
医療保険には、一生涯保険料が変わらない「終身型」と、一定期間ごとに保険料が更新される「更新型」があります。
更新型は高齢になればなるほど保険料が上がってしまうというデメリットがあり、年金生活になると支払えなくなってしまう人も多いため、終身型がおすすめです。
また、医療保険は特約を付加することで保障を手厚くできますが、特約が多くなると保険料も高くなります。保険料を安くしたい場合は、必要最低限の保障に抑えることが大切です。
医療保険の多くは掛け捨てで、貯蓄機能がないことも覚えておきましょう。
がん保険
がん保険とは、がんに特化した保障を得られる保険です。
一般的ながん保険では、がんと診断されたときや、がんによる入院や手術、がんの治療時に保険金を受け取れるものが多くなっています。
一般的な医療保険はすべての病気やケガに対応していますが、がん保険は「がん」を原因とするものに限られていることが大きな特徴です。
がんは一般的な病気に比べて、再発や転移の可能性があり、治療も長引くケースが多いことから、医療保険とがん保険の両方に加入し、手厚い保障を備える人も多くなっています。
がん保険のメリット
がん保険のメリットは、以下のとおりです。
- がん保険の一時金は使い道が自由に決められる
- がんの入院治療・通院治療のどちらにも対応する商品が多い
- がんの再発や転移でも保障が受けられる商品が多い
がん保険では、50万円や100万円など、まとまった額の一時金を受け取れるタイプがあります。この一時金は使い道を自由に決められるため、がんの治療費や生活費の補填、家族の交通費などなどさまざまなことに利用できます。
また、医療保険では基本的に「退院後の通院」に対してのみ保険金が支払われます。
一方、がん保険では、「入院なしの通院治療のみ」という場合でも、保険金が支給されるケースが多くなっています。
近年のがん治療では、入院せずに通院で抗がん剤を投与するケースが増えていますが、がん保険に加入しておけば、このようなケースでも保険金を受け取れます。
また、何年も治療が継続している場合や再発・転移の場合でも保障が受けられるケースが多くなっており、金銭的な負担を気にせずに治療に集中できるというメリットもあります。
がん保険のデメリット
がん保険のデメリットは、以下のとおりです。
- がん以外の病気は保障対象外である
- 保険商品によって保険金を受け取れる条件が違う場合がある
がん保険は、がん以外の病気は対象外です。そのため、がんにならずに一生を終えた場合は、保険の恩恵をまったく受けられないというデメリットがあります。
また、がん保険にはさまざまな種類があり、保障を受けられる条件も保険商品によって異なります。
例えば、保険商品によって再発防止のためのホルモン治療で保険金を受け取れたり、受け取れなかったりする場合があります。
がん保険を検討する際は、複数の保険会社の商品を比較して、条件が良いものを選ぶようにしましょう。
就業不能保険
就業不能保険とは、病気やケガなどで働けなくなった際の生活費に備える保険です。
保険商品が定めている「就業不能状態」に該当した場合、毎月の給付金が支払われるため、そのお金を生活費やローン返済に充てられるという特徴があります。
就業不能保険のメリット
就業不能保険のメリットは、以下のとおりです。
- 病気やケガの際の収入減に備えられる
- 医療保険でまかなえない経済的負担をカバーできる
会社員や公務員の場合は、病気やケガで仕事ができない場合は、所定の条件を満たせば「傷病給付金」を受け取れます。
ただし、給付金だけでは生活費を賄えない場合も多いため、就業不能保険で備えておくと安心です。
個人事業主や自営業の場合は、そもそも傷病給付金がありません。そのため、病気やケガによる収入減に備えたい場合は、毎月の給付金額を多めに設定することが大切です。
医療保険に加入している場合は、入院や手術・通院などの医療費には備えられるものの、療養期間中の生活費はカバーできません。
病気やケガによる就業不能に備えたい場合は、このような就業不能保険を検討すると良いでしょう。
就業不能保険のデメリット
就業不能保険のデメリットは、以下のとおりです。
- 保険商品によって「就業不能状態」の定義が異なる
- 支払い対象外となる免責期間がある
- 健康状態や職業によっては保険に加入できないことがある
保険会社が定める「就業不能状態」は、「長期入院」や「医師の指示による在宅療養」「障害等級1級・2級」などを指しますが、保険商品によって異なります。
就業不能状態の定義が厳しい場合は、保険金を受け取りにくくなるため注意が必要です。
また、精神疾患による就業不能状態は、保障対象外となっている場合も多いため、事前に確認することが大切です。
支払い対象外となる免責期間が設けられている保険商品も多いため、免責期間の有無や長さも合わせて確認するようにしましょう。
介護保険
介護保険とは、要介護状態や要支援状態になった際の介護サービスの費用を補うための保険です。
日本では、40歳以上のすべての国民に加入が義務付けられている「公的介護保険制度」があり、介護サービスを1割~3割負担で利用できます。
しかし、介護状態が長期で継続するケースも多いため、経済的な負担が大きくなってしまうという実態があります。
民間の介護保険は、この公的介護保険を補うための任意加入の保険で、要介護状態や要支援状態になった時に、一時金もしくは年金形式で保険金が支給されます。
介護保険のメリット
介護保険のメリットは、以下のとおりです。
- 家族の金銭的な介護負担を減らせる
- 一時金もしくは年金形式を選べ、保険金の使途は自由である
- 要介護状態が長期化する認知症にも対応している保険商品が多い
- 要支援から要介護まで幅広い要介護度に対応している
介護状態は病気やケガと違い、長期間にわたって継続する場合が多いため、介護費用の負担が重くなる傾向があります。
民間の介護保険に加入することで、公的介護保険制度の自己負担分をカバーできるため、家族の金銭的な負担を減らせます。
また、近年は認知症に対応している保険商品も増えており、保険金を受け取りやすいこともメリットとなっています。
介護保険のデメリット
介護保険のデメリットは以下のとおりです。
- 保険料が高額になる場合がある
- 保険金の支払い条件が厳しいことがある
介護保険は、加入年齢が高くなるにつれて保険料が高額になる傾向があり、家計の負担になってしまうことがあります。
また、長期間にわたって保険料を支払うものの介護状態にならずに亡くなった場合は、支払った保険料が無駄になってしまうというデメリットもあります。
介護保険では「要支援2以上」「要介護1以上」というように保険金の支払い条件が定められていますが、それに加えて一定の条件を満たさないと保険金が支払われないケースもあります。
介護保険を検討する際は、保険金の支払い条件をしっかり確認することが大切です。
介護保険も終身保険や医療保険と同様、加入時に健康状態を告知しなければなりません。持病や高齢の方は加入できない可能性があるため、健康な時に検討するようにしましょう。
将来の教育資金や老後資金の不足に備える保険の種類
保険の種類によっては、万が一の際の保障を備えつつ、計画的に資産形成ができる「貯蓄性がある保険」もあります。
ここでは、将来に向けた資産形成ができる保険を紹介します。
学資保険
学資保険とは、子供の教育資金を計画的に準備するための保険です。
学資保険では、加入者が一定期間、継続して保険料を支払い積み立てます。そして、主に子供の進学時期に合わせて学資金を受け取る仕組みです。
お金を受け取るタイミングは保険商品によってそれぞれです。
小学校や中学校・高校入学などの節目ごとにこまめにお祝金を受け取るタイプや、大学入学や卒業時に一括でお金を受け取るタイプがあります。
学資保険のメリット
学資保険のメリットは、以下のとおりです。
- 計画的に教育資金を貯められる
- 契約者の万が一にも備えられる
- 生命保険料控除を利用できる
- 返戻率が100%を超える商品がある
学資保険に加入すると、保険料が継続的に口座から引き落とされるため、貯蓄が苦手な人でも確実にお金を貯めることができます。
また、学資保険には保険料免除特約が付加されていることがほとんどです。
契約者が万が一死亡した場合は保険料支払いが免除され、遺族は満期時に当初予定していたお金を受け取れます。
学資保険に加入しておけば、契約者に万が一のことがあった場合でも、教育資金を確保できるというメリットがあります。
また、学資保険では返戻率が100%を超えるものも多く、預金でお金を貯める場合に比べて資産を増やすことが可能です。
学資保険のデメリット
一方で、学資保険のデメリットは以下のとおりです。
- 運用利回りが比較的低い
- 資金を引き出すタイミングを変更できず、柔軟性が低い
- 途中解約すると元本割れのリスクがある
近年の日本は低金利が続いているため、学資保険は利回りが比較的低いことがデメリットです。
また、学資保険はお祝い金や満期金が支払われる時期が決まっており、変更できないというデメリットもあります。
例えば、推薦入試で入学金や学費などが早い時期に必要になった場合は、満期より前の段階で解約せざるを得ないケースもあります。
学資保険を契約する際は、子供の進路をある程度想定し、それに合った受け取り時期の商品を選ぶようにしましょう。
個人年金保険
個人年金保険とは、老後資金を計画的に準備するための貯蓄型の保険です。
契約者が一定期間保険料を支払って積み立て、65歳や70歳など、契約時に決めた年齢から定期的に年金を受け取れます。
年金の受け取り方は以下のようになっており、自分に合った方法を選択できます。
個人年金保険の受け取り方 |
内容 |
終身年金 |
契約者が生存している限り年金を受け取れる |
確定年金 |
あらかじめ設定された期間にわたり年金を受け取る(契約者が亡くなった場合、遺族が受け取る) |
有期年金 |
あらかじめ設定された期間にわたり年金を受け取る。(契約者が亡くなった場合は支払われなくなる) |
個人年金保険のメリット
個人年金保険のメリットは、以下のとおりです。
- 計画的に老後資金を準備できる
- 個人年金保険料控除を利用できるため節税が可能
個人年金保険を利用してコツコツと資産形成をすることで、老後の生活費を堅実に貯められます。
貯金が苦手な人や、貯金をつい使ってしまうという人は、解約しづらく着実に積み立てができる個人年金保険がおすすめです。
また、個人年金保険料控除を利用できるため、保険料を支払っている期間は毎年所得税と住民税を減らせます。節税分はNISAなどで運用して貯めていくことで、相乗効果も得られます。
個人年金保険のデメリット
個人年金保険のデメリットは、以下のとおりです。
- 途中解約すると元本割れする可能性が高い
- 運用利回りが低いためお金が増えにくい
- 流動性が低い
個人年金保険は、長期にわたって保険料を積み立てていく保険です。「保険料を支払えない」「まとまった資金が必要」等の理由で途中解約した場合、元本割れするケースが多いため注意が必要です。
個人年金保険を契約する際は、余裕を持った保険料に設定することが大切です。
また、円建ての個人年金保険は低金利での運用になるため、積み立てているお金が増えにくいというデメリットがあります。
高い金利で運用したい場合は、外貨建ての個人年金保険がおすすめです。ただし、外貨建ての保険商品には為替リスクがあるため、仕組みをきちんと理解してから契約するようにしましょう。
養老保険
養老保険とは、死亡保険金と満期保険金が同額の、貯蓄性がある保険です。例えば、1,000万円の養老保険であれば、死亡保険金が1,000万円、満期保険金も1,000万円です。
養老保険の保障期間は一生涯ではなく、満期があることが特徴です。保険期間中に契約者が亡くなった場合は遺族が死亡保険金を受け取ります。一方で、被保険者が満期まで生存していた場合は1,000万円の満期保険金が受け取れる仕組みです。
このように、死亡リスクに備えつつ、まとまったお金を積み立てられることが養老保険の特徴となっています。
養老保険のメリット
養老保険のメリットは以下のとおりです。
- 満期保険金を受け取れる
- 一般生命保険料控除の対象のため節税できる
養老保険は、一定期間保険料を支払うことで、死亡リスクに備えつつまとまった資産形成ができることがメリットです。満期金は、教育資金や老後の生活資金として活用できます。
また、生命保険料控除の対象のため、節税効果を得られるというメリットもあります。
養老保険のデメリット
養老保険のデメリットは、以下のとおりです。
- 保険料が高い
- 運用利回りが比較的低い
- 途中解約すると元本割れリスクがある
養老保険の満期保険金は死亡保険金と同額に設定されているため、毎月の保険料が高くなってしまうというデメリットがあります。
また、養老保険では高額な保険料を長期間にわたって支払うケースが多いことから、加入する際は「満期まで無理なく継続できるか」を慎重に考えることが大切です。
近年は養老保険の利回りが比較的低いため、お金が増えにくいこともデメリットのひとつです。途中解約すると元本割れする場合もあるため、満期まで続ける前提で加入するようにしましょう。
終身保険や変額保険
死亡リスクに備えるための「終身保険」や「変額保険」は、掛け捨てではなく貯蓄性がある保険です。そのため、教育資金や老後資金を貯めるために、これらの保険も活用できます。
また、将来のための資金を貯める場合、貯蓄性がある保険だけでなく新NISAという選択肢もあります。
新NISAは株式や投資信託で運用するため元本割れリスクはあるものの、資産をより大きく増やせる可能性があります。
保険と新NISAのどちらを選ぶかということは、個人のリスク許容度や考え方、運用期間などによって変わります。
保険や新NISAの目的別の選び方については、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
まとめ
保険にはさまざまな種類があり、それぞれ備えられるリスクや特徴が異なります。
保険を選ぶ際は「保険に加入する目的」をよく考え、自分のライフステージや経済状況をふまえて最適な保険を選ぶことが大切です。
私たちの人生には、病気やケガ・災害などさまざまなリスクがありますが、保険を活用することでもしもの時に備えられます。
保険の種類は多く迷うことがあるかと思いますが、保険の特徴を理解したうえで複数の保険を比較検討し、自分に最適な保険を選ぶようにしましょう。
伊藤久実
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆している。