ふるさと納税のメリットやデメリットとは?
仕組みやしないほうがいい人までわかりやすく解説!

ふるさと納税といえば、「返礼品がもらえる」「お得感がある」「節税できる」などというイメージをお持ちの人もいるのではないでしょうか。しかしふるさと納税という言葉は知っていても、どのような制度なのか具体的にはよくわかっていないという人は少なくないかもしれません。そこでこの記事では、ふるさと納税の基本的な仕組み、メリット・デメリット、さらにおすすめの人やそうでない人を詳しくご紹介します。

・目次


ふるさと納税とはどういう制度?

ふるさと納税とは、自分が選んだ都道府県や市区町村などに「寄付」という形で、納める税金の一部を振り分ける制度です。この制度は、過疎化して税収が落ち込んでいる地域と都市部との地域格差を是正するために作られました。

基本的な仕組み

ふるさと納税は厳密にいうと「寄付」にあたりますが、寄付金額に応じて所得税や住民税の控除を受けられます。

つまり、本来住んでいる地域に納めるはずの所得税や住民税を、自分が選んだ地域に納められるようなものです。そのうえ、寄付金額に応じて返礼品がもらえることでお得感があり、年々人気が高まっています。

所得税や住民税が安くなる?税金控除について

所得税や住民税が控除されると聞くと、税金が安くなるイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。あくまでも、本来納めるべき税金を住んでいる自治体ではなく、自分が選んだ自治体に寄付できる制度だと考えましょう。

控除の額は、拠出した寄付金から自己負担額2,000円を引いたほぼ全額です。つまり、納める税金の額は同じですが、2,000円の負担で返礼品をもらえるということになります。

ただし控除できる金額には上限があります。一律で上限が決められているわけではなく、個々人の状況によって異なるので、自分の上限額がいくらか確認が必要です。

控除の上限額とは

自己負担金2,000円を除いた全額が控除されるのはいくらまでなのか、目安をご紹介します。

収入や家族構成のほか、住宅ローン控除や医療費控除などほかの控除を受けている場合などでも上限額は異なるので、あくまでも目安として参考にしてください。

ふるさと納税を行う本人の給与所得

ふるさと納税を行う人の家族構成

独身または共働き
※1

夫婦
※2

共働き+子1人(高校生)※3

共働き+子1人(大学生)※3

夫婦+子1人(高校生)

共働き+子2人(大学生と高校生)

夫婦+子2人(大学生と高校生)

300万円

28,000

19,000

19,000

15,000

11,000

7,000

350万円

34,000

26,000

26,000

22,000

18,000

13,000

5,000

400万円

42,000

33,000

33,000

29,000

25,000

21,000

12,000

450万円

52,000

41,000

41,000

37,000

33,000

28,000

20,000

500万円

61,000

49,000

49,000

44,000

40,000

36,000

28,000

550万円

69,000

60,000

60,000

57,000

48,000

44,000

35,000

600万円

77,000

69,000

69,000

66,000

60,000

57,000

43,000

650万円

97,000

77,000

77,000

74,000

68,000

65,000

53,000

700万円

108,000

86,000

86,000

83,000

78,000

75,000

66,000

750万円

118,000

109,000

109,000

106,000

87,000

84,000

76,000

800万円

129,000

120,000

120,000

116,000

110,000

107,000

85,000

850万円

140,000

131,000

131,000

127,000

121,000

118,000

108,000

900万円

152,000

143,000

141,000

138,000

132,000

128,000

119,000

950万円

166,000

157,000

154,000

150,000

144,000

141,000

131,000

1000万円

180,000

171,000

166,000

163,000

157,000

153,000

144,000

 

※1「共働き」は、ふるさと納税を行う方本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケースを指します。(配偶者の給与収入が201万円超の場合)

※2「夫婦」は、ふるさと納税を行う方の配偶者に収入がないケースを指します。

※3「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」を、「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」を指します。

※4中学生以下の子供は(控除額に影響がないため)、計算に入れる必要はありません。
例えば、「夫婦子1人(小学生)」は、「夫婦」と同額になります。また、「夫婦子2人(高校生と中学生)」は、「夫婦子1人(高校生)」と同額になります。

出典:総務省「ふるさと納税のしくみ」

この表は、住宅ローン減税や医療費控除などほかの控除を受けてない場合の目安です。具体的な上限額が知りたい場合は、お住まいの市区町村に問い合わせてみてください。

ふるさと納税を複数の自治体、もしくは同じ自治体で複数回利用したとしても、控除の上限額以内であれば、2,000円の自己負担金を除いた全額が控除されます。

ワンストップ特例制度とは

通常、ふるさと納税の控除を受けるには確定申告が必要ですが、その手間をなくしたのが「ワンストップ特例制度」です。以下の条件に当てはまる人は、確定申告をしなくても控除を受けられます。

  • 1か所から支払いを受けている給与所得者
  • 給与収入が2,000万円以下
  • 給与以外の所得がない
  • ふるさと納税の寄付先が5自治体以下
  • 医療費控除等、確定申告を必要とする申告がない

そもそも確定申告が必要な自営業者や2か所以上から給与を受け取っている人などは、ワンストップ特例制度を使えません。基本的に確定申告が必要ない給与所得者で、寄付先が5自治体以下であれば利用できる制度です。

※寄付先が5自治体以内であれば、1つの自治体に複数回寄付しても問題ありません。

ただし初めて住宅ローン控除を受ける場合は確定申告が必要なので、その年に限りワンストップ特例制度は利用できません。確定申告で忘れずに申告しましょう。

ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの控除は行われず、全額住民税から控除されます。所得税の還付はありませんが、翌年の住民税が減るので、手取りが少し増えることになるでしょう。


ふるさと納税のメリット

ふるさと納税を利用する人が年々増えているのは、多くの人がメリットを感じているからです。具体的にはどのようなメリットがあるのか、確認しておきましょう。

返礼品がもらえる

ふるさと納税といえば、「返礼品」というイメージがある人も多いのではないでしょうか。

ふるさと納税の返礼品は、その土地ならではのものが多く、さまざまな種類があります。自己負担金が2,000円かかるとはいえ、それ以上の価値を感じるものも多いため、大きなメリットといえるでしょう。

ただし返戻品の還元率は、寄付金の3割以下と決められています。寄付金が少ない場合、返礼品も安価なものになります。逆に寄付金が高くても、返礼品が高還元率とは限らないので、事前に内容をよく確認してくださいね。

また自分が住んでいる自治体に寄付しても、返礼品は受け取れません。これは通常の納税と同じことだからです。返礼品を目当てに自分の自治体に寄付をしないよう、注意しましょう。

税金の控除が受けられる

ふるさと納税で支払った寄付金は、2,000円を除いた額が全額控除されます。実質納める税金が少なくなるわけではありませんが、税金控除があることで、所得税の還付を受けられたり、翌年の住民税が少なくなったりといったメリットがあります。

通常であれば、住んでいる自治体にそのまま税金を納めます。同じ税金を払うのであれば、多少の負担金があったとしても、ふるさと納税を利用して返礼品を受け取れるほうがお得に感じるケースが多いでしょう。

地域貢献ができる

ふるさと納税を利用するということは、自分で税金を納める自治体を選べるということです。故郷の自治体や、災害があった場所に寄付するといった地域貢献もできます。

また、寄付金の使われ方がわかるのもメリットです。Webサイト等でお金の用途を開示していたり、寄付するときに使用用途を選択できたりする自治体もあります。使用目的に賛同できる自治体を選んで寄付する、という利用方法もよいのではないでしょうか。


ふるさと納税のデメリット

ふるさと納税には魅力的なメリットがある一方、デメリットもあります。マイナス面も事前にきちんと把握しておきましょう。

2,000円の自己負担は必ず発生する

寄付金のほぼ全額が控除されるとはいえ、自己負担金の2,000円は必ず発生します。2,000円で返礼品がもらえるものの、金銭面からみるとマイナスになるといえるでしょう。

また返礼品は寄付金の3割以下と決められており、たとえば6,000円の寄付金に対する返礼品の上限は「1,800円」です。これだけだと、自己負担額の2,000円を下回ってしまいます。

7,000円以上であれば、返礼品の上限は「2,100円」となるため、元を取れる可能性があるでしょう。ただし大きなメリットがあるとも言えないかもしれません。

節税や減税になるわけではない

何度かご説明している通り、ふるさと納税は税金の一部を前払いするようなものなので、節税や減税になるわけではありません。

ふるさと納税は、2,000円の自己負担で返礼品を受け取れる分、お得だと考えられる制度です。節税や減税を目的としている場合は、ほかの手段を考えた方がよいでしょう。

申請に手間がかかる

ふるさと納税の控除を受けるには、確定申告やワンストップ特例制度といった手続きが必要です。ワンストップ特例制度は確定申告と比べてとても簡潔ですが、書類を記入して返送するという作業が必要になります。

個人事業主や年間で6ヵ所以上の自治体で制度を利用した場合などは、確定申告が必要です。ワンストップ特例制度の手続きを忘れてしまった場合も、確定申告をすれば控除を受けられますが、手続きが面倒だという人にとってはデメリットでしょう。

上限額を超えた分は控除されない

控除の上限額を超えてしまった場合、超えた分は純粋な寄付となります。たとえば、上限額が40,000円なのに、50,000円分寄付した場合は全額控除されません。

しかも上限額はさまざまな条件によって異なるため、自分の上限額を事前にしっかり確認しなければなりません。同じ所得でもそのほかの条件によって上限額は変わります。

意図せず多く支払うことがないよう、注意してくださいね。


ふるさと納税の始め方

次に、ふるさと納税を始めるにはどうしたらいいのか、手順をお伝えしていきます。

上限額を調べる

まずは、控除の上限額がいくらなのか確認しましょう。目安額は先にお伝えした通りですが、確実なのはお住いの自治体に尋ねることです。そのほか、目安額をシミュレーションできるサイトなどもあります。

上限額を超えた分は控除されないので、まず初めに確認しておきましょう。

寄付する自治体や返礼品を選ぶ

控除の上限額を確認したら、寄付する自治体や返礼品を選びます。簡単なのは、ふるさと納税の情報を扱っているポータルサイトを利用することです。サイトによりさまざまな特徴があるので、いくつか確認してみるとよいでしょう。

また、自治体に直接申し込むことも可能です。方法は自治体によって異なりますが、メールや郵送、FAXなどで申し込めます。詳しい方法は自治体のHP等で確認してみてください。

複数の自治体や、ひとつの自治体に複数回の寄付を行うこともできます。ただし、6自治体以上に寄付をするとワンストップ特例制度を使えないので、注意してください。

寄付の手続きをする

寄付する自治体や返礼品が決まったら、申し込みをします。ポータルサイトを利用している場合は、そのまま手続きに進めます。

返礼品が届く時期や、寄付金の使い道を選べることが多いので、必要事項を記入しましょう。ワンストップ特例制度を利用するかどうかも、手続きの途中で選択できます。利用を希望する場合は、忘れずに選択してください。

自治体に直接申し込む場合は、寄付が完了してから返礼品を選べる場合と、手続きと同時に返礼品を選べる場合があります。

寄付金受領証明書や返礼品を受け取る

返礼品は、数日で届くものから数ヶ月かかるものもあります。また返礼品とは別に、寄付金の受領証明書が自治体から届くので、必ず受け取りましょう。

ワンストップ特例制度を利用した場合は、寄付金受領証明書と一緒に届いた書類に必要事項を記入して返送します。確定申告をする場合は、寄付金受領証明書が必要になるので、大事に保管しておきましょう。寄付をした証明になります。

税額控除の手続きをする

ワンストップ特例制度を利用した場合は、特にほかの手続きを行う必要はありません。確定申告が必要な場合は、忘れずにふるさと納税の申告を行いましょう。

繰り返しになりますが、ワンストップ特例制度を利用した場合は、全額住民税から控除されます。所得税の還付はないので覚えておきましょう。


ふるさと納税がおすすめの人

ふるさと納税は誰でも行えますが、特におすすめできるのは以下の条件に当てはまる人です。

年収が高い人

年収(所得)が高いということは、その分控除の上限額も高いです。寄付金額が高ければ高いほど、返礼品は豪華になります。

2,000円の自己負担や手続きに必要な手間を大いに上回るメリットを得られる可能性が高いので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

※ただし2,000万円を超える給与所得者の場合は、確定申告が必要になります。

ワンストップ特例制度を使える人

ワンストップ特例制度を使える給与所得者の場合、確定申告の手間を大幅に減らせます。また、自営業者はその年の正確な所得がわからないと、上限額も把握しにくいですが、給与所得者であれば把握しやすいでしょう。

気軽に挑戦できるので、これを機に始めてみてはいかがでしょうか。

欲しい返礼品がある人

返礼品は、食べ物や日用品のほか旅行に関するものなど、たくさんの種類があります。自分の上限額内であれば、自己負担2,000円で手に入るので、とてもお得になることも。

絶対に使う日用品を揃えたり、お取り寄せグルメを楽しんだりなど、目的に応じて選んでみてくださいね。ポータルサイトなどで返礼品をチェックしてみるのも楽しいかもしれません。

・表面利回り

 年間家賃収入÷購入価格×100

・実質利回り

(年間家賃収入-運用の諸経費)

 ÷(購入価格+購入時の諸経費)×100


ふるさと納税をしないほうがいい人は?

逆に、あまりふるさと納税をおすすめできない人は、以下に当てはまる人です。

所得税や住民税を払っていない人

ふるさと納税の税金控除は、所得税と住民税から行われます。そのため、もともとこれらの税金を支払っていない専業主婦の人や扶養内でパート勤務をしている人などは、控除できるものがなく、単純に自治体に寄付することになります。

最初から寄付するつもりであれば問題ありませんが、返礼品につられて安易に始めるのは考えたほうがよいかもしれません。

年収が低い人

たとえ所得税や住民税を支払っていても、所得が低い場合はあまりふるさと納税の恩恵を得られないかもしれません。

たとえば、年収350万円の人で配偶者を扶養しており、高校生と大学生の子供が2人いる場合、控除の上限は5,000円です。

このケースで、たとえば5,000円寄付した場合を考えてみましょう。返礼品の上限は、5,000円の3割である1,500円なので、自己負担金を下回ってしまいます。

このように、ふるさと納税は年収額によってはあまりメリットを感じないこともあります。

余裕資金がない人

ふるさと納税は、手元に余裕資金がない場合も、あまりおすすめできません。あとで控除されて戻ってくるとはいえ、先に寄付金を支払う必要があるからです。

返礼品につられて高額な寄付をしてしまい、生活資金に困ることがないよう、注意してくださいね。


ふるさと納税でよくあるQ&A

ふるさと納税について、基本的な知識をお伝えしてきましたが、それでもまだ疑問に思うことはあるでしょう。そこで、ふるさと納税でよくある質問をまとめてみました。

住宅ローン減税やiDeCoと併用できますか?

結論から言うと、住宅ローン減税やiDeCoと、ふるさと納税の併用は可能です。ただし、以下の注意点があります。

【住宅ローン減税を併用する場合】

住宅ローン減税分の控除を、全額受けられない可能性があります。

・ふるさと納税を確定申告で申請した場合→所得税と住民税から控除される

・住宅ローン減税→所得税で控除しきれなかった分は住民税から控除される(ただし上限値あり)

・ふるさと納税を確定申告で申請した場合

 →所得税と住民税から控除される

・住宅ローン減税

 →所得税で控除しきれなかった分は住民税から控除される

 (ただし上限値あり)

ふるさと納税の寄付金控除が先に適用され、残った所得税控除分で住宅ローン減税が適用されます。その結果、住宅ローン減税分が所得税から控除しきれない場合、住民税から控除される仕組みです。

ただし、住民税から控除される住宅ローン減税には上限があり、その上限額を超えた場合は控除しきれない分が発生します。

ワンストップ特例制度を使うと、ふるさと納税分の控除がすべて住民税から行われるため、住宅ローン減税は所得税から優先して控除されます。そのため、控除しきれない部分が発生する可能性は低くなります。

【iDeCoと併用する場合】

iDeCoを併用した場合、控除の上限額が下がる恐れがあります。

iDeCoの掛金は所得控除の対象となるため、ふるさと納税の寄付金控除に必要な課税所得が減少します。所得が少なくなれば、控除の上限額も低くなるので、注意が必要です。

このように、引ききれない税金が発生したり、控除の上限額が下がったりする可能性があります。そのため、住宅ローン減税やiDeCoとふるさと納税を併用する場合は、事前に控除額などをきちんとシミュレーションしましょう。

転職や退職をしたらどうなりますか?

転職や退職をした場合でも、年間の総収入をもとに控除額が決まります。退職した場合と、転職したケースで具体的に考えてみましょう。

【寄付金控除の対象になる収入】

  • 退職して、年内に再就職しなかった場合→1月~退職した月までの収入
  • 転職した場合→(1月~退職した月)+(転職した月~12月)

失業保険の手当は、寄付金控除の対象にはならないので、計算に含めないようにしましょう。また、注意が必要なのは、退職して退職金を得た場合です。

退職金には、もともと「退職所得控除」があるため、そもそも退職金にかかる所得税や住民税は大幅に軽減されています。そのため、退職金があってもふるさと納税の控除上限額にはさほど影響がありません。

退職金を得たからといって、多くの寄付金を拠出しても控除されない可能性があります。必ず事前にご自身の状況を確認しましょう。

複数回利用する場合、その都度2,000円の自己負担がかかりますか?

自己負担の2,000円は、寄付ごとではなく、年間の寄付総額に対して発生するものです。つまり複数の自治体や同じ自治体に複数回寄付しても、負担額が2,000円より多くなることはありません。

1度の利用でも複数回でも2,000円の負担です。


まとめ

ふるさと納税は、自分が選んだ自治体に寄付することで税金の控除を受けられ、返礼品も受け取れる制度です。自己負担金である2,000円を除いたほぼ全額が税金から控除されますが、控除額は個々人によって異なります。年収や家族構成、ほかの控除などの状況によって変わるので、自分はいくらまで控除されるのか確認が必要です。

状況によっては、ふるさと納税の恩恵をあまり受けられない人もいます。ぜひ本記事を参考に、事前にしっかりチェックしてみてくださいね。