NISAとつみたてNISAの違いは何?初心者はどちらを選ぶべきか徹底解説
あまり資産運用には詳しくないものの、NISAに挑戦してみたいという人も少なくないのではないでしょうか。しかしいざ始めようとすると、通常のNISAのほか「つみたてNISA」というものがあり、違いがわからずそこで立ち止まってしまうことも。そこでこの記事では、通常のNISAとつみたてNISAの違い、初心者に向いているNISAの利用方法、そしてNISAの始め方などをわかりやすくご紹介していきます。
・目次
NISAとつみたてNISAの基本的な概要
まずはNISAやつみたてNISAとはどのような仕組みなのか、基本的な知識をご説明していきます。NISAの何が良いのか、新NISAになって何が変わったのかなどおさらいしておきましょう。
NISAとは非課税制度のこと
通常、株や投資信託など行って得た利益や配当(運用益)には、基本20.315%の税金が発生します。NISAとは、この投資運用で得た運用益が非課税になる、国が定めた税制上の優遇制度です。
■例:100,000円の運用益が発生した場合
<通常口座の場合>
●税金 → 100,000×20.315=20,315円
●手元に残るお金 → 79,685円
<NISA口座の場合>
●税金 → 非課税なので0円
●手元に残るお金 → 100,000円
このように、NISAを利用するとしないとでは手元に残るお金に大きな違いがあります。資産運用を考えているなら、NISAを利用しない手はないでしょう。
2024年から新NISAに移行
NISAは2014年から始まった制度ですが、2024年から新制度に移行しました。旧制度では非課税になる期間が定められていたり、一般NISAとつみたてNISAの併用ができなかったりなどの問題点が指摘されていましたが、新NISAではそれらの問題が払拭され、さらに使いやすい制度になりました。
<新NISAと旧NISAの違い>
|
新NISA |
旧NISA |
非課税期間 |
無期限 |
一般NISA:5年間 |
年間投資枠 |
成長投資枠:240万 |
一般NISA:120万円 |
生涯投資金額 |
総額1,800万円 |
一般NISA:600万円 |
併用可否 |
併用可 |
併用不可 |
つみたてNISAからつみたて投資枠へ
上記の表からもわかるように、NISAという制度にはいわゆる普通のNISA(一般NISA/成長投資枠)と、つみたてNISA(つみたて投資枠)の2種類があります。つみたてNISAとは、毎月一定額を積み立てて投資していくスタイルのことです。新NISAではつみたて投資枠と呼ばれており、年間最大120万円(毎月10万円)まで投資できます。
一般NISAから成長投資枠へ
旧制度でいうところの一般NISAは、新NISAでは「成長投資枠」に当たります。成長投資枠では株式や投資信託を一度に購入でき、年間限度額は240万円までです。
つまりNISA(一般NISA)とは成長投資枠のことで、つみたてNISAとはつみたて投資枠のことを指します。旧制度から名称や細かい内容は変わりましたが、本質的な仕組みは同じです。
NISAとつみたてNISAの違いを徹底比較!
NISA(成長投資枠)とつみたてNISA(つみたて投資枠)は何が違うのか、一覧表で比較してみました。
<成長投資枠とつみたて投資枠の違い>
|
成長投資枠 |
つみたて投資枠 |
年間投資可能額 |
240万円 |
120万円(10万円/月) |
保有可能限度額 |
1,200万円 |
成長投資枠と合わせて1,800万 |
投資対象商品 |
上場株式、投資信託など |
長期の積み立てに適した投資信託 |
購入方法 |
都度、積み立てなど自由 |
積み立て |
どちらも18歳以上は利用可能で、非課税の保有期間に限度はありません。
年間投資可能額
成長投資枠の年間限度額は240万円で、つみたて投資枠の年間限度額は120万円なので、両方を合わせると年間360万円まで投資可能です。年間投資枠は、一度使い切ると再利用できないので注意しましょう。
たとえば、成長投資枠で240万円投資してそのうち100万円を同じ年内に売却したとします。すると売却時点での成長投資枠は140万円分です。しかし、すでに年間の上限である240万円を利用しているため、新たに追加で投資することはできません。翌年になれば再投資できます。
保有可能限度額
NISA口座での保有限度額は1,800万円です。そのうち成長投資枠は1,200万円までと定められています。また保有可能限度枠は年間投資枠とは違い、売却して保有枠が空けば再利用が可能です。
1,800万円上限まで投資しているうちの300万円を売却した場合、再度300万円分の投資が可能です。ただし上記の例のように、年間投資枠を使い切っている場合は翌年に購入しましょう。
投資対象商品
つみたて投資枠は、長期にわたって安定して資産運用することを目的としているため、対象商品も限定されます。具体的には、金融庁が長期の分散積み立て投資に適していると判断した投資信託です。
成長投資枠も長期の投資運用に適した商品が選ばれていますが、つみたて投資枠よりも選択肢が多くなります。「毎月分配型」や「信託期間が20年未満」「高レバレッジ型」の投資信託などは除外されていますが、投資信託のほか個別の株式銘柄を購入することも可能です。
購入方法
つみたて投資枠は、その名の通り毎月一定額をコツコツ積み上げていく方法です。毎月一定の金額で投信信託を購入するため、価格が安いときは多く購入でき、高いときの購入数は少なくなります。購入するタイミングを気にする必要がなく、平均購入単価が平準化されるため、初心者にもおすすめの方法です。このような購入方法を「ドル・コスト平均法」といいます。
成長投資枠では、好きなタイミングでその都度買い付けが可能です。相場が下がったタイミングで購入するなど、自分の思うように投資できます。購入方法に制限がないので、成長投資枠で積み立てをすることも可能です。
NISAとつみたてNISAのメリット・デメリット
成長投資枠とつみたて投資枠の違いから、それぞれどのようなメリットとデメリットが生まれるでしょうか。考えられるメリットとデメリットを洗い出してみました。
NISA(成長投資枠)のメリット
- 商品の選択肢が広い
- 株式、REIT、上場投資証券、新株予約権付社債なども選べる
- 自分の好きなタイミングで購入できる
- 投資可能額がつみたて投資枠よりも多い
成長投資枠のメリットは、自由度が高いことです。商品の選択の幅が広く、好きなタイミングで購入もできます。ある程度相場を読める場合は、利益を見込めるときにまとめて投資してリターンを得ることもできるでしょう。投資可能額もつみたて投資枠より多いので、資金が潤沢にある人にはメリットです。
NISA(成長投資枠)のデメリット
- 自分で判断する必要がある
- 元本が保証されていない
デメリットは、自由度が高い分だけ少しだけハードルが上がることです。購入のタイミングや購入銘柄などを自分で判断できる場合は良いですが、慣れていない場合は不安に感じることもあるでしょう。また投資である以上、元手が保証されるわけではないので、損失を被る可能性があることも念頭に置いておきましょう。
つみたてNISA(つみたて投資枠)のメリット
- 購入のタイミングを考える必要がない
- 比較的リスクが少ない商品を選べる
- 購入時の手数料や信託報酬が低め
- 少額から購入できる
つみたて投資枠のメリットは、一度設定してしまえばある程度ほったらかしで資産運用できることです。購入のタイミングを判断する必要がなく、金融庁が厳選した中から商品を選べます。また100円といった少額から始められるので、初心者でも挑戦しやすいでしょう。
つみたてNISA(つみたて投資枠)のデメリット
- 投資信託しか選べない
- 購入のタイミングを選べない
- 元本が保証されていない
つみたて投資枠のデメリットは、自由度が低いことです。株式等の個別銘柄を選んだり、購入のタイミングを調整したりすることはできません。積極的に投資を行いたい人にとってはデメリットになるでしょう。また成長投資枠と同様、元本が保証されているわけではないことも覚えておきましょう。
NISAとつみたてNISA、どちらを選ぶべきか?
成長投資枠とつみたて投資枠にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、どちらが良いとは一概に言えません。目的や状況に応じてどちらが向いているか異なるので、以下を参考にして自分に合う方を検討してみてください。
NISA(成長投資枠)に向いている人
- 一括投資をしたい人
- 株式等にも挑戦したい人
- 積極的に投資運用して利益を上げたい人
成長投資枠は自由度が高く購入できる商品も多いため、株式等自分で銘柄を選びたい人や積極的に投資運用して利益を上げたい人に向いています。まとまった資金を一度に投資したい人にもおすすめです。どちらかというと投資中級者向けなので、投資初心者の人はまずはつみたて投資枠で慣れてから、成長投資枠を利用するという方法もあります。
つみたてNISA(つみたて投資枠)に向いている人
- 投資初心者の人
- 長期でコツコツ運用したい人
- 少額から始めたい人
- なるべく手間をかけたくない人
積み立て投資は少額から始められますし、長期での積み立てに適している商品が対象なので、将来に向けてコツコツ積み立てたい人に向いています。購入できる商品が限定されており、購入のタイミングもあまり考えずにすむことから、初心者におすすめです。一度設定すればある程度放っておいても問題ないので、あまり手間をかけたくない人にも向いています。
併用もできる!
旧NISAでは一般NISAとつみたてNISAのどちらかを選ぶ必要がありましたが、新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠を併用できるようになりました。そのため、どちらを選ぶかはあまり悩まなくてもよいでしょう。
投資初心者の人はつみたて投資から初めて、慣れてきたら成長投資枠も利用してみてはいかがでしょうか。ただし年間投資可能額を考えると、どちらの枠も利用した方が限度額まで早めに到達できます。早めに投資できるとそれだけ利益も見込めるため、資金に余裕があるなら、最初から併用を視野に入れてもよいでしょう。
NISAを始めるにはどうしたらいい?
NISAの基本的な知識を理解したところで、最後にNISAの始め方を具体的にお伝えしていきます。あまり難しいことはないので、ぜひ挑戦してみてください。
金融機関を選ぶ
NISA口座は1人につき1つの口座しか作れないため、まずはどの金融機関を選ぶか決めます。NISA口座はネット証券や総合証券、銀行などで取り扱っているので、以下のポイントを参考に選んでみてください。
取扱商品
各金融機関で取り扱っている商品は異なります。自分が購入したいと考えている商品があるなら、その商品を取り扱っているかを必ずチェックしましょう。また、銀行では株式の取り扱いがないので注意が必要です。
取引手数料
売買するときの取引手数料も、金融機関によって異なります。一般的にネット証券の方が総合証券よりも取引手数料が低い傾向にあります。
そのほか、各社とも初心者向けのサービスを提供していたり、ポイントサービスを展開していたりするので、選ぶ際の参考にしてください。
<参考>初心者におすすめのネット証券
以下で紹介するネット証券は、取扱商品が豊富で、国内株式や投資信託、米国株式の取引手数料がかからないものが多いです。そのほか、各社の特徴を簡単にお伝えしていきます。
・SBI証券
国内トップクラスの大手ネット証券です。人気の銘柄だけでなくマイナーなものも取り扱っています。三井住友カードのクレカ積立だと、最大3.0%のポイント還元があります。
・楽天証券
楽天系列のため、楽天ポイントがたまったり楽天ポイントで投資したりすることが可能です。無料の投資情報が充実しています。
・松井証券
投資信託の残高に対して、業界最高水準である年間最大1.0%のポイントが付きます。知識が豊富なスタッフに、無料で相談できる窓口があるので初心者も安心です。
・マネックス証券
NTTドコモの系列会社のため、ドコモユーザーにおすすめです。dカードでの積み立てでポイントがたまったり、たまったdポイントを投資に利用したりすることができます。
・auカブコム証券
投資信託の保有残高に応じて、Pontaポイントがたまります。「au PAYカード」を利用するとさらにポイントをためられたり、たまったポイントを運用資金に利用できたりします。
NISA口座を開設する
金融機関を選んだら、NISA口座を開設します。通常の一般口座ではなくNISA口座を選びましょう。金融機関の窓口かインターネットから申し込みできます。
基本的に、必要書類を提出して金融機関や税務署の審査を受け、口座が開設されます。必要書類は、口座開設申請書や本人確認書類、マイナンバー確認書類などです。
銘柄を選んで購入する
NISA口座を開設したら、いよいよ取引開始です。資金を準備して購入したい銘柄を選びましょう。入金方法は、金融機関への直接入金、口座引き落とし、クレジットカード決済などがあります。
購入する銘柄を選ぶ際は、内容や特徴をよく確認しましょう。何を選ぶか悩んだ場合は、まずは金融庁の基準を満たした「つみたて投資枠の商品」から選ぶのもおすすめです。
まとめ
新NISAでは、成長投資枠(旧一般NISA)とつみたて投資枠(旧つみたてNISA)の2つの購入枠があります。成長投資枠は一括投資が可能で、購入できる商品も幅広く、自由度が高いのが特徴です。一方つみたて投資枠は、長期の安定運用に適した商品を毎月一定額購入していきます。どちらにもメリットとデメリットがありますが、初心者はまずはつみたて投資枠から始めてみてはいかがでしょうか。